『剣遊記[』 第五章 フェニックス作戦第一号。 (20) 「清美さん! 孝治くんがひちゃかちゃドエラかこつなっちょりますばい!」
「あんだってえ!」
徳力と清美も荒生田たちとは違う場所(森と草原の境い目)で、同じ光景を見つけていた。しかしこのあとが、荒生田組と清美組の、決定的に異なるところだった。
すぐに清美は、徳力のお尻を右足で蹴った。
「ばっきゃろぉーーっ! まっごあくしゃうつぅーーっ! 愚図愚図しちょらんで、早えとこ孝治ば助けに行くったぁーーい!」
蹴られた徳力が、その場でピョンピョンと跳ねながら応えた。
「痛っ! わ、わかっちょります! わかっちょうばってん、あれぐらいの怪物やと剣一本だけやったら、とても太刀打ちなんかできんとですよぉ!」
こちらはこちらで、無謀極まる雄叫びと、情けない受け答えばかり。
これら両者は、対照的と言えば対照的。だがもちろん、両方とも、あまり誉められたやり方とは言えないだろう。 (C)2013 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |