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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

     (20)

「清美さん! 孝治くんがひちゃかちゃドエラかこつなっちょりますばい!」

 

「あんだってえ!」

 

 徳力と清美も荒生田たちとは違う場所(森と草原の境い目)で、同じ光景を見つけていた。しかしこのあとが、荒生田組と清美組の、決定的に異なるところだった。

 

 すぐに清美は、徳力のお尻を右足で蹴った。

 

「ばっきゃろぉーーっ! まっごあくしゃうつぅーーっ! 愚図愚図しちょらんで、早えとこ孝治ば助けに行くったぁーーい!」

 

 蹴られた徳力が、その場でピョンピョンと跳ねながら応えた。

 

「痛っ! わ、わかっちょります! わかっちょうばってん、あれぐらいの怪物やと剣一本だけやったら、とても太刀打ちなんかできんとですよぉ!」

 

 こちらはこちらで、無謀極まる雄叫びと、情けない受け答えばかり。

 

 これら両者は、対照的と言えば対照的。だがもちろん、両方とも、あまり誉められたやり方とは言えないだろう。


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