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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

     (19)

「先輩っ! 孝治が追われちょります!」

 

「ぬぁにぃーーっ!」

 

 どうにか離れた場所(ここは草原の高台らしい――かえって目立つような気もするが)まで逃げ延びている、裕志と荒生田であった。だがその位置からでさえも、サイクロプスに追われている孝治たちの光景が、はっきりと荒生田のサングラスの奥の三白眼に写っていた。

 

「早よ孝治ば助けに行かんと!」

 

 裕志が絶叫して、荒生田に孝治の救出を求めた。これにサングラスの戦士は、日頃の彼の素情とはまるで似合わないほどに、悠然と構えたまま。

 

「待つっちゃ☹ オレたちは自分の身ば犠牲にして味方の生命ば救ってくれた彼……やなか彼女の名前ば、永遠に忘れちゃあいけんと☹」

 

 つまりが見殺し。

 

 世にも手前勝手な戯言{ざれごと}をほざいていた。


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