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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

     (2)

「なんがね?」

 

 孝治は友美の言いたいらしい不審点とやらが、最初はてんでわからなかった。それからすぐ、友美から左手を引かれ、三枝子から離れた場所まで連れていかれた。

 

「三枝子さん……言葉づかいが少し変わったみたいっちゃよ♐ 今まで自分のことば『あたし』っち言いよったとに、今は『うち』なんち言いよるけ☞」

 

「『うち』ぃ……? それがどげんかしたと?」

 

 まだピンとこない気持ちの孝治に、友美のほっぺたが、プクッとふくれた。

 

「もう、相変わらずにぶいっちゃけぇ♨ なんか三枝子さんが、フェニックスとおんなじ自称の言い方になっとうちゃよ✑」

 

「……そう言えば、そうっちゃねぇ……✍」

 

 ここまで言われて、孝治もようやく思い出した。あのフェニックスの自称の仕方が、確かに『うち』であったということを。

 

「確かにそうやったとやけどぉ……やったらなして三枝子さんまで、おんなじ言い方になったっちゃろっかねぇ?」

 

「う〜ん、そこまではわたしかてわからんちゃけどねぇ……☁ ただ、『うち』っちゅう自称の仕方やったら、美奈子さんも言いよるばいねぇ☞ もっともあっちは京都でこっちは九州なんやけど、わたしが知っちょる限りじゃ『うち』ってけっこう、全国区的な言い方なんやけどねぇ……✍」

 

「……そう言えばぁ……そうやったばいねぇ……☁」

 

 孝治も友美も、そろって両腕を組んで考え込んだ。しかし結論を得るには、時間がなさ過ぎだった。


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