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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

     (15)

「なんとかせないけんばい!」

 

 このとき清美たちからはぐれてしまい、ひとりで森の中を走っていた三枝子は、ある決断を自分の胸に下していた。

 

「こげなときこそ、フェニックスからもろうた力ば使うときなんかも!」

 

 まさに機は熟せり!

 

 しかしそれを実行するには足枷{あしかせ}となるモノが、現在三枝子の手元にあった。

 

 二羽のひなワシである。

 

 二羽とも現在、三枝子の小物袋の中に収められていた。だが、度重なる衝撃にすっかり怯えているのか、甲高く鳴き叫んでいた。

 

 ぴいっ! ぴいっ!

 

「こん子たちばなんとかせな、巻き添えしちゃうかも!」

 

 二羽をどうにかして助けようと袋を抱きかかえ、ふと周囲を見回せば、いつの間にかすぐ近くを、孝治と友美も並んで走っていた。その孝治も右手で友美の左手を握っているのだが、今は他に頼める者を捜す余裕はなかった。

 

 意を決して、三枝子は叫んだ。

 

「孝治さぁーーん! これば受け取ってぇーーっ!」


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