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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

     (14)

 孝治たちが必死の一方で、荒生田も裕志を連れて――もとい蹴倒して逃げていた。

 

「ええいっ! 離さんけぇ、裕志ぃ! おまえが犠牲になりゃオレが助かるとやけぇ!」

 

「先ぱぁーーい! そりゃあんまりですっちゃよぉ!」

 

「しゃーーしぃーーっ! あとはてめえの魔術でなんとかせぇ!」

 

「無理でぇーーっす! 走るんに精いっぱいでぇ、呪文ば唱えられましぇーーん!」

 

 そこへズゴゴゴオオオオオオッンンと、またもサイクロプスが大木を振り落とす。まさに大地震のごとく、地面が大爆発! その衝撃で、荒生田と裕志の体が宙に舞う。

 

「わひぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 

「きゃあああああああああっ!」

 

 並みの怪物と違って人型は、実に厄介極まるシロモノ。崖を登ればいっしょによじ登ってくるし、かと言って洞窟にでも飛び込めば、自在な両手で掘り進んで追ってくる。

 

 しかも人と同じで、道具や武器も扱える。

 

 もちろんそれほど高度な物は使えないが、体格に見合った怪力と巨大さから考えれば、それだけで物凄い脅威と破壊力があるわけだ。

 

 唯一の対処法としては、多人数でクモの子を散らすがのごとく、各自バラバラに逃げ回すしか道がない。そうなると、決して馬鹿にするわけではないが、多少知性で劣るサイクロプスのこと、どの獲物から追い駆けるべきかで頭が混乱。

 

 グゥバガぁぁぁぁぁぁッ!

 

 さらにヤケッパチとなって暴れ狂う結果となるわけ。


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