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『剣遊記[』

第五章 フェニックス作戦第一号。

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『あ〜あ、いったいいつんなったら、こげな不毛な議論が終わるっちゃろっかねぇ☁☠』

 

 先ほどから延々と続く無駄な時間的やり取りに、涼子はほとほと飽きの感情が湧いていた。

 

 実は涼子も薄々感じてはいるのだが、三枝子は清美からの追及をうやむやにするため、孝治を『生け贄のヤギ{スケープ・ゴート}』として、うまく利用する気でいるようなのだ。

 

 なんとまあ、けっこう強{したた}かな女格闘士だこと。

 

 しかし、ここでだからと言って、涼子もこのまま、知らんぷりを続けるわけにもいかなかった。

 

『ここはひとつ、あたしが助けてあげるしかなかっちゃねぇ〜〜☻』

 

 幽霊娘が実行できる危機打開法と言えば、ちょっとしたポルターガイストでも起こして、清美と三枝子の気を別方向にそらす作戦ぐらいなものだろう。もっとも、これより他にできる方策もないので、いつまでこの作戦でごまかせるかは、保証の限りではないのだが。

 

『では、ここらで一発ドデカいのば……☞☆』

 

 とにかく涼子は即席で作戦決行を決め、思念を発動させようとした。そのとき、いつもの恒例だった。

 

「清美さぁーーん! ドエラかことですばぁーーい!」

 

 森の奥から徳力が、息を切らしながらで走ってきた。


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