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『剣遊記[』

第二章 フェニックス伝説、その前日。

     (3)

「フェニックスぅ? ああ、おるばい☆ ときどきこん村の上ば飛んで行きようけんねぇ☝」

 

「こん辺りじゃ名物やけん✌ なんでも阿蘇ん山ん中に巣ぅ作っとうとか言いようばってん☟」

 

 阿蘇に到着するなり、一行は付近の村々で聞き込み調査を始めてみた。すると意外なほどに、多くの目撃情報を得られたのである。

 

「なんねぇ♋ 公式の文献にゃいっちょも書いちょらんかったとに、地元じゃけっこう有名ばいねぇ♨ なんか知らんはおれたちばかりなり、って感じっちゃね♨」

 

 とにかく一定の収穫をかかえて、宿屋に戻った孝治、友美、涼子の三人。改めて自分たちの了見が、予想以上にせまかった事実を思い知らされた。

 

 早い話が『井の中の蛙{かわず}』。だから腹立ちまぎれで、孝治はつい口から愚痴をこぼしていた。またこの気持ちは、友美と涼子も同じようだった。

 

「そうっちゃねぇ〜〜♦ まあ、わたしたちかてあんまし大きいことは言えんとやけど、文献ば書いた学者さんっち、あんまし現場ば歩かんで、図書館で読んだ本の書き写しばっかししようけ、こげな新しか発見ができんとかもね☻」

 

『けっきょく頭がガチガチやけ、本に書いとうこと以外……たとえ自分の目で見たことも信じようっちせんちゃねぇ〜〜☻☻』

 

 まるで孝治に同調してくれるかのように、お互いでささやき合っていた。

 

「涼子はなんか、偉い人に、なんか言いたかことがありそうっちゃねぇ☛」

 

 孝治はふと、上を見上げた。そこでは頭上で浮遊をしている涼子のほっぺたが、なぜかプックリとふくれていた。

 

 これに涼子が答えてくれた。

 

『大有りなんよ! 前に読んだ本に書いちょったんやけど、学会では霊の存在ば公式に認めてないんやて♋ それやったら今ここにおるあたしって、いったいなんやっちゅうのよ!』

 

 孝治はふむふむとうなずいた。

 

「なるほどねぇ☻ そりゃ涼子が怒るんも無理なかやね☛」

 

 などと妙に盛り上がった激論を交わしているうちに、三人は今晩の宿へと帰り着いていた。


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