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『剣遊記閑話休題編U』

第一章  ヴァンパイア娘、初めてのおつかい。

     (2)

「行っちゃったぞなぁ……✈」

 

「ええ、彩乃のことにゃけん、きっと一週間くらいは帰ってこにゃいっち思うにゃん♥」

 

「いつまでんブツブツ言{ゆ}うとらんで、さあさあ、仕事っちゃよ♪」

 

 大コウモリ――彩乃も、今は南の空の彼方の一点。そんな光景になるまで見送ってから、桂や朋子たちが各々好き勝手をささやいた。それを由香が急かしながら、全員で店内へと戻っていく――と言ったところで、先頭に立っている香月登志子{かつき としこ}が、急に立ち止まってうしろに振り返った。

 

「ねえ、みんなぁ♡ しばらく彩乃がおらんとやけ、今夜でも焼き肉っとか中華ば食べに行かんねぇ♡ きょうから当分、彩乃の『あの件』ば気にすることなかけんねぇ♡ やきー、焼き肉んタレに『あれ』ば使ったかて、文句ば言われんのとちゃう☀☀」

 

 これにはすぐ、全員から賛同の声が湧き上がった。

 

「あっ♡ それよかにゃん♡ 行こ行こっ♡」

 

「あたしも賛成ぞなぁ♡ お肉食べたぁーーい♡」

 

「それってよかやねぇ♡ それじゃ、きょうは焼き肉で、あしたは餃子ってのはどげんかしら♡」

 

 たちまち朋子や桂や由香までが話に乗ってきた。けっきょく仕事よりも遊びを優先にする彼女たちなのだ。

 

 ほんなこつ仕事しんしゃいよ、ったく。


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