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『剣遊記]』

第五章 必殺! お仕置き人参上!

     (7)

「にゃろぉ〜〜♨ やつらどこに隠れとうとやぁ〜〜♨」

 

 角燈{ランタン}を右手に持ち、広い屋敷内の中庭を捜索する蹴飛であった。だが照明で照らされた範囲の中に、敵らしい姿は一切見当たらなかった。

 

「もしかして……ほんとは誰もおらんとやなかろうねぇ〜〜☁」

 

 それでもだんだんと心細くなり、つい希望的観測を、蹴飛はポツリとつぶやいた。

 

 いつものパターンで、そのときだった。

 

「ぐえっ!」

 

 突然どこから投げられたものやら、一本の細長い縄がいきなりビュッと飛んできて、蹴飛の首にシュルルと巻きついた。しかもそのまま強引に、蹴飛を芝生の上へと引きずり倒す。おかげで油入りのランタンが庭に転がり、パッと炎が燃え上がった。

 

「ぐげええええええっ!」

 

 その炎が照らす中、必死にもがく蹴飛であるが、首に巻きついた縄が、意外なほどに丈夫。そのためなかなか、ほどくことができないでいた。それどころかさらに息が詰まり、もはや失神寸前。そんな蹴飛の耳に届く声があった。

 

「覚えときや✐ 盗賊には投げ縄の技術もあるっちゃけね✄」

 

 蹴飛に聞き覚えはないが、これは秀正の気取った捨てゼリフ。それと同時であった。後頭部をゴツンと、金槌にて一撃。蹴飛は意識を喪失した。


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