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『剣遊記]』

第五章 必殺! お仕置き人参上。

     (5)

「ふぇ〜〜! 飲み過ぎちまったばぁ〜〜い☂」

 

 宴会の部屋から出たあと、出人の足は速かった。膀胱にけっこう溜まったようだ。出人はトイレまで通じる長い廊下を、ひたすらバタバタと走った。すると自分の前方に、なぜか鎧を着ている何者かが、うずくまっている様子に気がついた。

 

「なんね、あれ?」

 

 これがふだんであれば、警戒心を剥き出し。隠し持っている超小型の短剣を、上着の懐から抜き出す場面であろう。だけどあいにく、今夜の出人は酒が頭を支配中。戦いに身を投じる者としての発想が、まったく出てこなかった。

 

 出人はここで少々、尿意を我慢。

 

「お嬢さん、腹でも痛かとね?」

 

 このように優しく声をかけた理由は、廊下にうずくまっている人物が、長い黒髪の女性であったからだ。

 

「なんやったらこんオレが、気持ちええことしちゃるたいね♡」

 

 さらにスケベ心を丸出し。背中から声をかける出人に、女性がいきなり顔を上げた。

 

「冗談やなかっちゃけね!」

 

「うがらっ!」

 

 次の瞬間、目にも止まらぬ早業で放った女性の剣(鞘付き)が、出人の下っ腹をバスッと直撃! 出人は失神した。おまけに溜まっていた膀胱を激しく強打されたものだから、これにてはしたない話。出人がこの場で見事、ジャアアアアアアァァァァァァっと漏らす結果になった。

 

「うわっち! えんがちょーーっ

 

 出人を倒した女戦士――孝治(?)は、思わず十歩退いた。まあそれでも、いわゆるお仕置きの第一号である。ただし方法は、少々セコ目でもあったのだが。

 

 さらに女性の武器(色気以外でいかにも弱々しそうな姿)を前面に出した経験は、今回が二度目の戦法(前回はバニーガール姿)。それでも孝治は、一応誇らしい気分に浸っていた。

 

「さっ、こん調子でドンドンやっかねぇ☀」


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