『剣遊記13』 第一章 天才魔術師のお見合い。 (9) 「秋恵ちゃんの秘密ぅ?」
これには友美のほうが、とても興味しんしんの顔。椅子から立って身を乗り出した。
どうもこの場では、女猛者としての異名をとる律子に遠慮があるのか、友美はいまいち影の薄い感じでいた。それでも新しいキャラの登場には、少なからずの好奇心を抱いているようだ。
(う〜ん、友美らしいっちゃねぇ☺)
孝治には友美の姿勢が、いつもの好奇心以上のように感じられた。
「すると秋恵ちゃんも、なんか亜人間{デミ・ヒューマン}っちゅうことやろっか?」
「は、はい☆」
友美から注目をされ、秋恵の桃色じみた顔色が、急に赤味を増してきた。また、その恥ずかしっぷりが、なんとも言えない初々しさも、同時に感じさせてくれた。
この恥ずかしがっている秋恵の代わりか、これにも律子が、はっきりと答えてくれた。
「そうなんばい✌ 秋恵ちゃんはこげんふつうに見えたかて、実はホムンクルス{魔造人間}とふつうの人間の混血なんよ✋✊ ちなみにホムンクルスはお父さんのほうやけね⛹」
「へぇ〜〜、ホムンクルスなんけぇ✑✒」
これは孝治も初めて耳にする、ホムンクルスと人間のハーフの話だった。このためか無自覚ながら、瞳が真ん丸の感じにもなっていた。
「で、そげんなったら秋恵ちゃんには、なんか特別な能力があるっちゅうことやろっかねぇ?」
「わたしも知りたかぁ〜〜☆」
これにて孝治と友美の興味もますます発展したが、時間がその解答を許してくれなかった。
「律子さぁーーん! 乗合馬車が発車する時刻ばぁーーい!」
店の正面入り口から、急に光明勝美{こうみょう かつみ}の声が轟いたのだ。
律子もすぐに、声の方向へと顔を向けた。
「そやった! 勝美さんに馬車の切符ば頼んじょったんばい✄ っちゅうわけやけ孝治くんに友美ちゃん、あとは秋恵ちゃんから直接聞いてや⛑」
「え、ええ……うわっち!」
けっきょく律子は、とまどう孝治と友美――それに秋恵を残した格好。慌ただしく店内から外へと飛び出した。そこで律子は、勝美が全身でかかえている馬車の切符を受け取り、そのまますぐに乗り込んだようだ。なお勝美が切符を全身でかかえて――と表現した理由であるが、彼女はピクシー{小妖精}なので、常人の十分の一サイズの体だと、小さな切符でも、やはりそれだけの大きさとなるからだ。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |