『剣遊記13』 第一章 天才魔術師のお見合い。 (6) ふたり(千秋と千夏)の師匠(美奈子)捜しは、簡単に終了した。彼女は寝泊まり小屋から百メートルほども離れていない、周囲の山々を眺められる丘の上に立っていた。
四方の山はすべて、雲海に浮かんでいる島々のような光景となっており、まさに絶景中の絶景と言えた。
「師匠、こないなとこにおったんかいな♐」
すぐ地上に着地した千秋が、美奈子の背中に声をかけた。
「おやまあ、ふたりしてどないしはったんや?」
弟子たちに心配をかけさせ、このような場所まで足を運ばせたにも関わらず、肝心の美奈子は大層呑気なご様子だった。
「千秋らに黙ってあっちブラブラこっちブラブラせえへんでほしいわ、まったく☢☠」
思わずの小言をまくし立てる千秋に、美奈子はやはり呑気そうな口調で応えるのみでいた。
「それはまあ、こないにきずつない(京都弁で『すまない』)ことしてしまいましたなぁ⛄ まあ、うちのことやったら、こんとおり無事でおますさかい、そないいかつい顔せんでもようおます☻」
「まあ、確かに師匠やったら、出歯亀親父が出たかて、攻撃魔術ですぐにぶっ飛ばしてまうんやけどなぁ……☻」
ついでではないが、千秋は今のひと言に、さらに付け加えをしてやった。
「師匠の今の格好……どう見たかて、覗き魔野郎を自分から誘うとるようなもんやで☢ 外出るときは、ちゃんと服くらい着たほうがええと千秋は思うで、ほんま☢☢」
「おやまあ、そうでっか?」
千秋に指摘をされて美奈子は、改めて自分自身の体を眺め下ろしてみた。
朝一番に吹く山中の風が、素肌にとても心地よかった。
そうなのである。
美奈子は小屋からこの小高い丘の所まで、見事に一糸もまとわない全裸姿のまま、堂々と歩いてきたわけなのだ。
確かにここは、街道から少し外れた山の中の横道であり、道行く人々の数は、極端に少ない場所と言えた。
いや、早朝の時間帯であれば、通行人はほぼ絶無と言うべきか。
しかしそれでも、うら若い乙女が堂々と、真っ裸での屋外闊歩を実行したのだ。これはふつうでは到底考えられない、非常識行動そのものであろう。
ところがやはり、美奈子の性格は史上最大級に大胆であった。
「まあええやおまへんか☀ せっかくこないに雄大な景色が目の前に広がってまんのや☜☞ これを体全体で大満喫させてもらういうのも、大自然の神々への大きな感謝と言うものですさかいに☀☀☀」
「まあ、そない言うたらそうかもしれへんなぁ☀」
これには千秋も、思わずの納得。この思いも無理はなかった。ちょうど昇り始めた朝日に照らされた美奈子の裸身が、まさに神々しいのひと言に尽きていたからだ。
だけど千秋の目線はやはり、美奈子のある部分に集中していた。この感想は、口には出さないようにしておいた。
(……師匠、やっぱおっぱい、えろうデカいなぁ☠ こればっかしはしゃああらへんのやけど、千秋も千夏も将来、師匠並みにおっぱい、仰山デカくなるんやろっかなぁ?)
「きれいでしゅうぅぅぅ☆ 美奈子ちゃんまるでぇ、女神ちゃんみたいですうぅぅぅ☀✌」
千秋のうしろに控えて、今の今まで静かにしていた。ここで初めて千夏も、全裸で丘の上に立ち(ほとんど仁王立ち)、全身で太陽の光を浴びている美奈子に、思いっきりな瞳キラキラを向けていた。
美奈子は微笑みながらで振り返り、千秋と千夏の双子姉妹に、ニコリとささやきかけた。
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