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『剣遊記13』

第一章  天才魔術師のお見合い。

     (5)

 ふたりが小屋から飛び出したとたんだった。姉の千秋がピタッと、はやる足を自分で停めさせた。

 

「あれぇ? 千秋ちゃん、どうしたんですかぁ?」

 

 不思議そうな顔をして尋ねる妹――千夏に、千秋は空を見上げて答えた。

 

「地面を走っても埒があかんさかい、ここは空の上から師匠を捜そうやないか☀ 師匠から習ろうたばかりなんやけど、『浮遊』の術を試してみるには、絶好のチャンスやないか☆」

 

「うわぁーーい☆☀ 千夏ちゃんもぉそれぇ、大賛成さんですうぅぅぅ☀☀☀」

 

 すぐに姉妹は小屋の入り口前で、覚えたてである魔術の呪文をブツブツと唱えた。

 

その効果は早速で発揮された。千秋と千夏の体が、ふわりと宙に浮き上がった。

 

「上々やで✌ ほな、師匠を空から捜しに行こっか✈」

 

「はいですうぅぅぅ♡♡♡」

 

 双子姉妹の体は、その思考の及ぶままだった。意思の力で示しさえすれば、自由自在に空中を駆け巡れるのだ。

 

「うわぁ♡ お山さんもぉお川さんもぉ、とってもとってもちっちゃいさんですうぅぅぅ♡☀☆」

 

 千夏の大喜び声が、深い山中の隅々にまで響き渡った。


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