『剣遊記閑話休題編T』 第四章 玄海の波は穏やか。 (14) さて、給仕係たちがバーベキューに舌鼓を打っている最中だった。肝心の孝治、友美、涼子の三人は、いったいなにをしているのか。
「これで良かっちゃね☀ これなら島のどっから侵入者がおったかて、すぐにわかることができるっちゃけ☀☆」
なぜだか額に汗を流しての労働中に、孝治はいた。
『でも、こう言うのっち、ふつう事件が起こる前にたくさん用意しとくもんやなか? 今から用意したかてそれこそ後の祭り⚠ 後手後手ってもんちゃよ☠』
「しゃーーしぃーーったい!」
涼子の的確なる指摘はともかく、孝治は島の松林全体にロープを張りまくり、それに木の板を何十個もぶら提げていた(さらにそのひとつひとつの板に、たくさんの小さな棒を、ヒモでくくり付けて垂れ下げている状態)。
これはいわゆる、応急の防犯装置。万一不心得者が島に上陸をすれば、ロープに足が引っ掛かって木の板がガチャンガチャンと鳴り響き、すぐに無断侵入がわかるという仕掛けなのだ。
「これで今晩から安心してぐっすり寝れるっちゃね♡ もっと早ようから、こげんしときゃ良かったとばい♥」
「ほんなこつそうやねぇ♡ なにしろ島におるんはか弱い女ん子ばっかしやけ、どげな危機が襲ってくるか、ようわからんちゃけねぇ☞★」
友美も孝治のロープ張り作業に協力していた。友美は得意である物体操りの魔術を駆使して、作業をスムーズに進めたのだ。
『か弱い女ん子って……それってなんか、あのメンバーば見れば疑問だらけっちゃねぇ? それにそん中に、孝治も入っとうちゃろ☛ 少なくともか弱い女ん子が真っ裸でおっさん相手に抱きついて、首絞めなんか絶対せんっち思うっちゃけど☻』
「それもしゃーーしぃーーったい!」
涼子のささやきにより孝治の頭の中で、昨夜のこっ恥゚ずかしい記憶が、たった今経験したばかりのように鮮明に浮かび上がった。
「頼むっちゃけ、きのうんこつは、もう言わんでほしいっちゃねぇ☹」
孝治は顔が羞恥で、一気に真っ赤の思いとなった。確かにヤケクソだったとはいえ、昨夜の自分の暴走ぶりは、今すぐにでも忘れてしまいたい悪夢そのものに違いないからだ。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |