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『剣遊記閑話休題編T』

第四章 玄海の波は穏やか。

     (13)

「今回はたまがるような休日になったもんばいねぇ✌」

 

 これにて事件は解決。射羅窯は衛兵隊に連行されていった。ついでに言えば、こいつがほざいた仲間うんぬんは、けっきょくなんだったんだろうか。

 

 それはとにかく、このあとの玄界灘は、実に波静か。島には再び、平和が訪れた。

 

 でもって冒頭のセリフ。昼近くになって桃子が砂浜に朋子たちを集め、改めて海岸でのバーベキュー大会を開催した。

 

 夏の浜辺での楽しみといえば、やはりこれに尽きるだろう。

 

「でも、えずか思いばさせちゃった分、きょうはわたしたちの大サービスやけね♡ 遠慮なんかせんで、どんどん食べるとよぉ♡」

 

「はぁーーい♡♡♡」

 

 元より遠慮知らず――おまけに食いしん坊万歳の登志子を筆頭にして、未来亭給仕係の面々が、まるでピラニアのごとくだった。それなりに大量に用意をして、ジュ〜ジュ〜と焼けた最初の牛肉を、さん・のー・がー・はい!――で、全員瞬く間に片付けたのだ。

 

「あ〜〜、おいしいぞなぁ♡ もっとお肉つかーさい♡」

 

「桂はマーメイドなんやけ、魚んほうが好物やなか?」

 

「あたしだって陸上暮らしが長いんじゃけん、とっくに肉食に変わっとうぞな♡」

 

「あっ! 彩乃ぉ、それってまだレア焼けばい!」

 

「よかよか♡ わたしって、血ば残っとうくらいの生焼けがええとばってんねぇ♡」

 

「ちょっとぉ! わたしんメガネ……曇ってまりかぶったけ、見えんようになったとばぁい!」

 

「じゃあ、真岐子がよう見えんうちに、こん肉ばいっただきっまぁ〜〜っす♡」

 

「あ〜〜ん☁ 登志子の意地悪ぅ〜〜☂」

 

 由香、桂、朋子(もち人間に戻っている)、彩乃、真岐子、登志子たちがワイワイガヤガヤ、バーベキューにパクついている中だった。海の家のオーナーである高須は、肉焼き係に徹していた。

 

「やっぱ君たちみんな、育ち盛りばいねぇ♡ 胸が大きゅうなるんもよかけど、体重のことも、少しは心配したほうがええばい♥」

 

「はぁーーい♡ 大丈夫っちゃよぉ♡ ちゃんと減量には気ぃつかいようっちゃけぇ♡」

 

 昨夜は射羅窯から斧で脅され続け、恐らく一番怖い思いをしたはずであろう登志子であった。それが今や、この場で一番の元気者となっていた。

 

 これだから女の子はわからない。

 

「朋子もたまがるようなお友達ばつくったもんばいねぇ☆ これやったらどげな悪人や怪物ば襲ってきたかて、なんでもしばき倒せるんやなか♡」

 

「えへへっ♡ そうにゃろっかにぇ〜〜♡」

 

 叔母でスキュラの桃子から誉められ(?)、とにかく朋子は鼻高々。お尻の猫しっぽを、左右にプルンプルンと振っていた。

 

 朋子自身は三毛猫でいる間、無我夢中で射羅窯の顔面を、思いっきり猫爪で引っ掻いたりをした。しかしそれでも、大手柄であることに、絶対変わりはないであろう。


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