『剣遊記 超現代編U』 第二章 性転換娘のいる日常。 (9) 水泳の授業は、これもふつうの体育と同じで、北方先生が担任である。これはどうでもよい話。
おれたちふつうの男子はプールの横に併設されている更衣室で、全員が水泳のパンツに着替えた。これは小学校のときから変わらない、腰にバスタオルを巻いて、下着のパンツと海パンを履き替える方法。
孝治は体育のときと同じで、やはり保健室で着替えているとのこと。その光景は想像でしか描くことができないのだが、それだけでおれは――いやB組の面々全員、ムラムラとした思いで、頭の中がいっぱいのはずだ。
そんな倒錯した思考の中、着替えを終えたおれたち男子は、そのムラムラとした思いのままで、プールサイドに集まった。
「おい! 孝治が来るぞ!」
一番で岳純のやつが、右手で校庭の方向を指差した。
「おっ!」
おれも思わず声を上げた(裏返っていた)。おれの目線の先には、紺色の女子用スクール水着に着替えている孝治が、これまた慌てた感じで、こちらに走ってくる場面があった。
初めての体育のときと、まったく変わらない光景だった。着ている衣装(体操服と水着)以外は。
「え、エロいぜ……エロ過ぎる……☻」
おれの左横で、正男がしっかりと鼻の下を伸ばしていた。
「このエロオオカミ🐺が☠」
などとおれはつぶやいたが、その気持ち自体はよくわかる。清純で真面目な女子高指定のスクール水着とはいえ、そのセクシーパワーは圧倒的だ。いや、むしろ正規の教育機関公認であるからこその、堂々とした魅力なのであろうか。
紺色のスクール水着(以下スク水)が体の線にピッタリと密着している孝治は、バストもヒップも、すでに拝見済みである体操服やハーフパンツ以上に、均整の取れたプロポーションをはっきりと表現させていた(当然過ぎるとは思うが、もちろん『もっこり』などは無い☻)。スク水こそまさに、ビキニなどとはまた違った女性美を、最大限に発揮させる手段とも言えそうだ。
また繰り返すけれど、肩まで伸びている黒髪も、まさに新鮮そのもの。我が校は特に髪型などに厳しいわけではないが(さすがに金髪染めまではいないが、ふつうにカッコをつけたヘアースタイルはざらにいる)、孝治の長髪を(ついでに化粧も)許可してくれた学校側の対応に、これも大いに感謝感激を表明するべきであろう。
それでも以前に、おれは孝治に言っていた。孝治が女に変わってからのことだが。
「おまえ、オオカミ🐺の群れの中に、たった一匹で入ってきたヒツジ🐑みたいなもんなんだぞ♋ そこんとこ気をつけてるのか?」
そしたら孝治のやつ、こんな風に返してきた。
「それは違うと思うよ☺ どちらかと言えば、ぼくがオスオオカミ🐺からメスオオカミ🐺になっただけだよ✊ それ以外はなにも変わってないって✌」
「あ、そう……☁」
問題の根本が違うような気もするのだが、これも孝治の天然化がなせる思考なのだろうか。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |