『剣遊記 超現代編U』 第二章 性転換娘のいる日常。 (8) ご都合主義的展開で申し訳ないのだが、季節は夏だったりする。夏休みも、もうすぐ――と言うわけ。当然、話題はこれである。
「あしたの体育はプールでの実習だってよ☆」
「知ってるよ☕」
おれが重大な話をしたと言うのに、孝治のやつ、あっさりと受け流しやがった。これが承服できないおれは、水泳によって必ず起こるはずの、とても大きな問題をぶち撒けてやった。
「だって、プールと言えば水着だろ! おまえもそれで参加するつもりかぁ!?」
「するよ☺」
「あっそ♋」
おれは次のセリフに詰まった。
孝治は成績の面では、B組の中でけっこう上位のほう。いつもクラスのベストファイブをウロチョロしているような位置にいた(おれは……自分のことは言わない☠)。またスポーツのほうも、いろいろな種目を一応こなせるのだが、足はそんなに速くないし、鉄棒や跳び箱なんかも、どちらかと言えば苦手の部類に入っていた。これは付き合いの長いおれだから言える事実である。当然水泳にしても決してカナヅチではないけれど、やはり泳ぐスピードは、かなりに遅いほうだった。
おっと、問題の本質は、それではない。もはや言うまでもないが、今の孝治は純度百パーセントのJK(女子高生)なのだ。
「つまりそのぉ……☁」
まだセリフに詰まっている状態のおれに、孝治はあっけらかんと言ってくれた。
「ぼくが着るスクール水着も、やっぱり香蘭からの特別な支給品だって♡ 初めて女性用の水着を着ることになるんだけど、いったいどんなもんかなぁ?☺」
あかん、こいつ、頭の中が泳ぐ楽しみだけで占められてやがる。たった今自分が言ったセリフの中に、その重大な問題点が入ってると言うのに。
おれはあせる思いで教室内をキョロキョロと見回したが、やっぱり今の孝治のセリフは、しっかりとクラスの野獣どもの耳に響き渡っていた感じ。どいつもこいつも口では押し黙っているものの、その両目ははっきりと血走ってやがるから。
それにしても、この孝治の能天気ぶりは、いったいどうしたものなのだろうか? なんだか以前の男時代に比べて、かなりに天然の様相を感じさせてくれるのだが。
この状態を端から見ればまさしく、巨乳でプリケツ、天然系の『ドジッ娘』に加え、脅威の『ぼくっ娘』要素も有りと言う、まさにロリ好み男子の理想そのものではなかろうか――と、おれは思った。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |