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『剣遊記 超現代編U』

第二章 性転換娘のいる日常。

     (4)

 お風呂のシーンは終了したが、上がったあとの後日談が残っていた。

 

「パパ、ちょっと他の部屋に行ってて あっ、ママはいいわよ☺⛑

 

「えっ? どうして?」

 

 居間でテレビのニュースを見ていた父をいきなり廊下へと押し出し、しっかりとドアも襖{ふすま}も閉めてしまう友美。室内を女だけの空間にしてから、元長男で現在長女である孝治を、居間のソファーに座らせる。それからひと言。

 

「お姉ちゃん、上の寝間着脱いでみて♐」

 

「えっ? 脱ぐの? う、うん……☁」

 

 困惑しきって訳がわからなくなっている人間は、たやすく人からの指示に従うものである。疑問満載を表情にモロ出ししながら、孝治は妹の友美から言われるがまま。寝間着の上を脱いで(まだ女性用を買ってないので、男物のままだと言う)、つまりトップレスの格好となったらしい。ちくしょう! 神が許せば、おれもその場に同席したかった☠♨

 

「友美お姉ちゃん、持ってきたよ

 

「ありがと☻」

 

 遅れて居間に入った涼子が持っている物は、胸囲を測るときなどに使うメジャー(巻き尺)。友美はそれを受け取って、丸出しとなっている孝治の胸の上を、少々の力を込めてひと回りさせた――と孝治が言った。

 

 計測の結果は友美と涼子だけでなく、母の登志子までもビックリさせた。

 

「すごい! 八十センチ以上ある!」

 

「お姉ちゃん、凄い!」

 

「母親の私より大きいじゃない

 

「そんなに大きいの?」

 

 孝治自身は、まるで実感が無かったと言う。だけどそのとき、言われて自分の胸をうつむいて見てみると、周りが驚くのも、なんだかわかるような気がしたとも言う。

 

 孝治はそのとき言ったそうだ。

 

「ぼくも病院で、お医者さんに胸がどんどん大きくなるみたいなんですけど、って訊いたら、たぶん体内の脂肪分が女性化で移動して、胸の部分に集中してるんじゃないかって言われたんだけど、本当にそうみたい♋」

 

「お医者さんの言うことに間違いないと思うわ☛ こうなったら毎日測って、バストの成長の記録を残さないとね☻♐」

 

 このとき友美の瞳は、どこかのミラーボールのように、キラキラと光り輝いていたと言う(孝治の証言。おれにもよく理解ができる✌)。事実、その後も毎日続けた計測で、孝治のバストは確実に、一日一から二センチのスピードで、おれが見てもわかるほどにふくらんでいったのだ。

 

 ちなみに父の康幸氏は計測中ずっと居間から閉め出され、男ひとりだけとなった家族構成の淋しさと悲哀を感じ続けたとも聞く。

 

 いつの時代でも、親父は孤独なものだ。特に、今まで家庭内で唯一味方であったはずの長男が、いきなりの性転換。女性陣営に入ってしまったのだ。これでは女系となった家族の中で、ますます肩身のせまい思いとなるんだろうなぁ


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