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『剣遊記 超現代編U』

第二章 性転換娘のいる日常。

     (15)

 孝治の突然の女性化から、早くも一週間が経過。港南工業高校に、ひさしぶりの男が現われた。

 

 今どき珍しいリーゼント頭に、高校生のくせして登校時からサングラス😎なんかをかけている伊達{だて}男。

 

 その名は荒生田和志{あろうだ かずし}。

 

 そいつの姿を早朝から目に入れたおれは、早速大声で呼んでみた。

 

「おーーい! 和志ぃ!」

 

「ゆおーーっし! 秀正じゃねえかよぉ☆」

 

 和志はすぐ、おれに気がついてくれた。前にも一度説明をしたが、ここでも繰り返す。港南工業高校ではあだ名などをふつう使わず、在校生は大方、下の名前で呼び合うのが校風となっていた。由来も繰り返すけど、やはり不明。

 

 その件はもう棚に上げて、おれはたまたまいっしょにいた裕志と足並みそろえて、和志の前まで駆け寄った。

 

 和志はニヤリと前歯を光らせてから、ひと言。

 

「ったく、長い無期停学だったぜ☠ オレがいねえ間、この学校になんか変わったこととかなかったか?」

 

「ま、まあな……☻」

 

 おれは苦笑の気分になった。だけどこの和志の問いには、裕志が先に言ってくれた。

 

「あるって言うたら、あるんだけどなぁ☻ 和志が西高の番をボコボコにして無期停学喰らってた間に、交通事故で入院してた孝治が退院したんだけどなぁ

 

「ほう、孝治が治ったか☀」

 

 ここまでは和志も、ふつうの反応だった。ふつうでないのは、これからと言えた。裕志が言いにくそうにして、話を続けた。

 

「それが、ちょっと変わったことになってなぁ……☻」

 

「変わったことぉ?」

 

 和志のサングラスの奥で光る三白眼が、怖そうな目線で裕志とおれをにらんだ。また裕志は裕志で、いかにもなにか言いたそうな顔をしているのだが、今はまだ黙ってようの気にもなっているようだ。

 

「ま、まあな……ここは和志をビックリさせてえからなぁ☻

 

「そ、そう……☻」

 

「なんだよ、もったいぶりやがって⚠⛔

 

 和志は不満のようだけど、おれも裕志に同調した。なんと言っても楽しみは、まだまだ先に延ばしておきたいから。


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