『剣遊記 超現代編U』 第二章 性転換娘のいる日常。 (14) 「じゃ、じゃあ、入るぞ⛐」
我ながらさらに間抜けな発言だと思いつつ、おれは孝治の部屋に入った。そこでまず目にしたものは、真正面の壁に貼られている、戦艦大和と零戦のでっかい実写ポスター(モノクロ)だった。
おれはポカンと口を開いた。
(か、変わってねぇ……♋)
こんなおれの有様にも気づかず(おれは口と目ん玉をパッチリと開いて、驚きの表現を的確に表わしている――と言うのに)、孝治は笑顔満載で言ってくれた。
「実はさぁ、また新しく日本陸軍の九七式中戦車を作ったんだけど、ぜひ秀正に見てもらいたくてさぁ♡☺」
「あっ……い、いいんじゃない♋☻ ちょっと見せて……☻」
(これがおれを家に呼んだ理由かぁ……☁)
おれの本心は、いまだとまどいの真っ只中にあった。それはともかくとして、孝治から手渡された戦車のプラモデルの完成品を、一応は真面目な振りをして、おれは上下と前後左右から眺め回してみた。
はっきり言って、おれには孝治ほどのプラモの趣味はなかった。それでも手渡された戦車の完成品が、けっこう上出来な出来栄えなのには感心した。塗装なんかも上手に塗られているし。
「……す、凄くいいと思うよ☻☻」
「ありがと! そう言ってぼくのプラモデル認めてくれるの、ほんとに秀正だけなんだよ☀♡」
おれの当たり障りのない褒め言葉で、孝治はピョンと飛び上がって喜んでくれた。本当に無邪気極まる野郎――もとい女の子だ。
要するに話の結論は、これしかなかった。つまり孝治は女の子に変わっても、ミリタリーオタクを全然やめていなかったのだ。
ここでおれからの忠告。
(少しはオシャレにも興味持てよな♐)
口から出しては言えないので、心の中だけで叫ぶ。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |