前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記 超現代編U』

第二章 性転換娘のいる日常。

     (13)

「今、家には父さんも母さんも妹たちもいないから、遠慮なしで上がっていいよ☀」

 

「そ、そうか……☁」

 

 おれは思わず、ゴクリとツバを飲んだ。今さら言うのもなんだが、おれは女の子の部屋に招待されたことなど、生まれてこの方一度もないのだ。それがたとえ、元男子のクラスメートであったとしても、極度の緊張を強いられるシチュエーションであることは間違いない。それがわかっているゆえに、おれは実に間抜けなひと言を発してしまった。

 

「お、お邪魔しまぁ〜〜っす☁☁」

 

「誰もいないって言ってるだろ

 

 孝治がニコやかに微笑んでくれた。これも相手が男であれば、実に小憎らしいところ。だけどもなぜか、女の子が相手だと、愛嬌たっぷりで可愛らしく見えるのだから、世の中やっぱり不思議だ。

 

「じゃ、じゃあ上がるぞ

 

 くどいのは百も承知で、おれは鞘ヶ谷家に足を踏み入れた。

 

「どうぞ、いらっしゃい♡✌」

 

 孝治はもろ能天気丸出しで、おれを自分の部屋のほうに招いてくれた。

 

 ここで初めて言うが、孝治はこれで、ミリタリーオタクの傾向があった。だから自室の中には軍艦とか戦闘機なんかのプラモデルが何個も棚の上に並んでいて、おれにたくさん自慢をしてくれたものだ。

 

(それが女の子に変わっちまったもんだから、さすがに趣味のほうも様変わりしてんだろうなぁ☻☹)

 

 などと廊下を歩きながら考えるおれの頭の中では、可愛いファッションやアクセサリーが並んでいる部屋の光景が浮かんでいた。その描写があまり具体的でない理由は、おれの知識では女の子の趣向について、それ以上の予想と想像がむずかしいからだ。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system