前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記 番外編X』

第一章  狙われた(小心)魔術師。

     (9)

 クァァァァァオオオオオン!

 

 ついに新造キマイラが格納庫から這い上がり、尾田岩の頭上をも踏み越えて全身をあらわにした――と、ここまでの文章での表現は簡単なのだが、ここは裕志も初めに見たとおり、古い石造りの城の中なのだ。

 

 つまりがボロい建造物の内部で巨大な生物が活動を開始したら、これがただで済むはずがない。

 

「ふぉっふぉーーっ!」

 

 たちまち天井や壁がひび割れてガラガラガラッ グアッシャーーンと崩れだし、周辺にもうもうと煙や埃が舞い上がった。そのため尾田岩は、見事落ちてきたガレキの下敷き。

 

「ふぉぉーーっ!」

 

 その黒い魔術師姿を、あっさりとバルキムの前から消し去った。

 

 ゆがんだ性格をした魔術師の復讐は、けっきょくなんの成果も出さないまま。

 

 哀れにも。

 

 それから無念にも、あえなく潰えて消えたわけであった。

 

 中年魔術師に、哀悼の花束を。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system