『剣遊記 番外編X』 第一章 狙われた(小心)魔術師。 (7) このあとの操作は、実に簡単なように見えた。中年魔術師がなにやら呪文をつぶやき、それから(太鼓型)器具の上部にある黄色のボタンを、ポンと左手の人差し指で押すだけ。ところがこの先が、大迷惑大千万の事態となった。
「あんぎゃああああああああああっ!」
裕志の全身に、いきなり小さくではあるが、電撃がほとばしったのだ。電気ショックに快感を得る者など皆無とは言わないが、この世では絶対に少数派であろう。
「ふぉっふぉっふぉっ☀ ええでっ☆ そん調子やぁ☆☆」
裕志の苦しむ有様を見た尾田岩が、こちらはこちらで全身をまさに、大袈裟そうな快感で震わせていた。しかしこれでは、ただの変態サディスト。もしかしたら協会追放の真の理由も、案外このような性格に要因があったりして。
つまりがもともとからの危ない性分。
「わわわわわぁーーっ!」
この間にも裕志の体に電流が走り続け、それと同時であろうか。バルキムの青いガラスの眼球にも、ほのかな光が生じ始めていた。
これがなまじ、失神には到らない弱電流であるばかりに、裕志の苦痛は持続されるばかり。最悪の悪循環となるわけだが、ここにも中年魔術師の、ゆがんだ性分がよく表わされているようだ。
「ふぉっふぉっふぉーーっ! もうすぐやぁ! もうすぐ我れのバルキムが覚醒するんやぁーーっ☢☠ そないなったら我れはこの世を統括する、神にも等しい存在になれるんやでぇーーっ☜☝☞☟」
やっぱりこの男は危ない。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |