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『剣遊記 番外編X』

第一章  狙われた(小心)魔術師。

     (4)

「ふん☠ 魔術師協会のアホンダラどもが、我れが提唱する、ドラゴン{竜}を自由にコントロールできる新魔術を邪道呼ばわりして、あげくは我れの新造キマイラ{合成獣}を危険やなんやと難癖つけて、我れを協会から勝手に追放したもんやさかい☠ 我れはその復讐を果たすんやぁ☠!」

 

「あのぉ……協会に復讐するんは、それこそあんたの勝手なんですけどぉ……それとぼくが、いったいなんの関係があるとですかぁ?」

 

「ぬわに?」

 

 話が長くなりそうなので、裕志はここで、自分にとって最も重要な疑問点を尋ねてみた。するとこの魔術師――尾田岩は小鼻をふくらませ、いつの間にやら、顔面真っ赤となっていた。これは自分が一番しゃべりたかった話題が佳境に入ったタイミングに、裕志からの別方面な問いが入って、ある意味出鼻をくじかれたためであるようだ。

 

 だけどもこいつもすぐに、冷静さを取り戻した感じ。口の右端に改めて、薄ら笑いを浮かべさせていた。

 

「え、ええやろ☻ 教えたるわい☜」

 

「さっきからおんなじセリフの繰り返しなんですけどぉ……☁」

 

 裕志のか弱いツッコミは無視。魔術師がそれこそ勝手に話を続けてくれた。

 

「我れの新造キマイラは、すでに外観だけは完ぺきに完成されとんのやぁ✌ そやさかい、あとはそのキマイラに生きた知的生物……特に魔術を習得しとる魔術師の人格を移植さえしたら、我れのキマイラは完全に完ぺきなる創造物となるんやでぇ✌✌」

 

「うえぇーーっ!」

 

 裕志は寝たままで絶叫した。

 

「そ、そげなぁ! ぼくはキマイラなんかになりとうありましぇ〜〜ん!」

 

 一般的なキマイラであれば、魔術師の端くれたる裕志も、とっくに勉強済みでいた。それは自然界において絶対に産まれるべきではない異形の怪物で、主なイメージとしてはライオンの胴体を持ち、背中にはドラゴンの翼、さらに頭が三つ――右からヤギ、ライオン、それからドラゴンと、種族の異なる生物が並び、御丁寧にもしっぽが毒蛇となっている。

 

 裕志は巨大な恐怖心に怯える中でつぶやいた。

 

「ぼくぅ……そげな化けモンに変えられるっちゃろうかぁ……♾」


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