『剣遊記15』 第四章 謎のロビンソン漂着。 (8) 「おっさんが目ぇ覚ましよったでぇ!」
千秋の口調は、相変わらずで乱暴な感じ。こちらとは別に、同じ血が流れる双子ながら、千夏は見事に的が外れているはしゃぎようだった。
「うわぁーーい☀ カッコいいお仲間さんが増えちゃいましたですうぅぅぅ♡♡♡ なんだかロ〇ンソン・ク〇―ソーさんみたいですうぅぅぅ♡♡☺」
幼女――もとい、彼女がはしゃぐ理由は、まさにそのセリフのとおり。ヒゲぼうぼうの顔とはいえ、カミソリで剃ればきっと、イケメン間違いなしであったからだ。恐らく骨格からして、そうだろう。
「千夏、静かにしいや⛔」
「はいですうぅぅぅ♡」
美奈子から注意をされ、またすなおになる一面が、これまた可愛い。それはそうとして、ヒゲ男である。今まさに目覚めようとしている彼は、千夏の言うとおり、謎の漂流者――〇ビン〇ンなんとかとは言えないだろうか。今さら『〇〇』で隠しても、ずっと前からサブタイトルでネタバレしているのだけど。
「なんか、言い得て妙っちゅうもんやねぇ☻」
孝治もその辺の漂流モノの例えについては、特にツッコむ気にはならなかった。そのロ〇〇ソンとやらである彼は今も、目が覚めたとはいえ、医療室のベッドに寝かされていた。もう一度説明を繰り返すが、この医療室も最新鋭魔術の賜物であって、長い航海中になんらかの病気やケガに遭ったとき、すぐに自力で適切な治療が行なえるようになっていた。もちろん孝治にも冒険者として最低限である治療の知識はあるのだが、それ以上に経験豊富であろう美奈子アンド最新鋭魔術的医療設備があれば、それこそ鬼に金棒と言えるのかも。
「こ、ここは……☁」
施設自慢はこれくらいにして、目を覚ました男の発声第一号は、次のとおり。
「どこかいのう? わしゃあ……いなげなことになっとんじゃ?」
「うわっち! 広島弁ばい♋」
「今度は孝治がそこにツッコむとぉ? はもう置いといて、こん船(ラブラドール・レトリーバー号)とおんなじ方言っちゃね☛ これで一応、日本人っち証明されたわけやけど✍」
孝治と友美で、そろって驚きの声を上げた。
『方言が奇妙なとこで一致っち……これって偶然やろっかねぇ? なんか話が出来過ぎなんやけど☹』
無断で同席している涼子も涼子なりに、話の展開に少なからずの疑問をささやいた。これもいつもなら聞こえる者は孝治と友美だけなのだが、今回からは千秋も、耳で参加をしているわけ。しかもけっこう義理堅い性格らしい千秋は約束をしたとおり、師匠の美奈子や妹の千夏には、内緒にしてくれていた。
おっと秋恵にも。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |