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『剣遊記15』

第四章 謎のロビンソン漂着。

     (3)

「うっわぁ〜〜っ☀ ここん海も前んとこみたいに綺麗な海ばいねぇ〜〜♡ 戻ると、もうちっとあとにしよっと!

 

 早くも前言は撤回。秋恵はすなおに喜びを表現。念のためのつもりか、周囲をキョロキョロと見渡した。もちろんここにも人影はおろか、足跡👣ひとつ残っている形跡もなし。完全無欠の人跡未踏海岸である。これを孝治や美奈子たちに教える前に、少しだけでもひとりで独占してみたい――そのような願望が生じたとしても、これはこれで当たり前の心境であろう。

 

「いえーーい!☀」

 

 秋恵は矢も楯もたまらず、砂浜に向けて駆け出した。駆けながらなぜか、着ているビキニを上から下まで、パッパッと脱ぎ捨てたりもする。

 

 意外に器用な娘である。

 

 これは、やや露出趣味傾向のありそうな師匠――美奈子の影響もあるのだろう。けれどもともと秋恵自身にも(その体質上)、裸族主義的な一面があった。実際、未来亭の女子寮ではひとり部屋を間借りして住んでいるのだが、仕事が終わって自分の個室に戻ったとき、秋恵は着ている服をいつも、一枚残らず脱ぎ捨てていた。

 

 つまりひとりの空間内での、完全全裸主義。ただ一般の人たちの前(孝治たちは除くようだ☻)では、その主義を引っ込めているだけのこと。

 

 とにかく、たった今までの退屈感情もどこへやら。瞬く間に真っ裸スタイルへと変換した秋恵が、砂浜を思いっきりに駆け回った。

 

「やったぁーーっ! 今んとこあたしだけのプライベートビーチばいねぇ!✌」

 

 知らぬが仏と申すべきか。繰り返すが秋恵は現在、この島が実は無人島ではないという事実を聞いていない。孝治たちも、もう少し気を利かせて早く戻って報告をしていれば、秋恵もここまで羽目を外すような真似はしなかったであろう。

 

 秋恵はまさしく、砂浜を思う存分に転がりまくった。それも文章で表現するとおりに両手を組んで体を丸め、頭から前のめりに、砂の上をコロコロと回転していった。

 

 早い話が秋恵は体を変形させ、恒例である桃色のボールになっちゃったわけ。説明を少し付け加えると、その表面は完全にツルツルのスベスベで、目も口も髪の毛もまったく見当たらない、完全な桃色球体の格好。これは広い砂浜の独占が、よほどうれしい気持ちの表われであるようだ。桃色ボールは自由自在に転がり回り、やがて波打ち際から海の中に、ポチャンと飛び込んだりもした。

 

 そのとたんにボールが、今度は桃色の魚体型に変形。ピンクの表面には鱗もエラも存在しないが、体をくねらせてそれこそ本物の魚のように、海中をスイスイ泳ぎまくり続けた。


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