『剣遊記15』 第四章 謎のロビンソン漂着。 (2) でもって当の秋恵は桃色ビキニスタイルのまま、島内を気ままに散策中。やはり南国の孤島なだけあって、足元の地面は、ほとんどが砂地。所々に草木が、少々茂っている程度である。それでもたまに森らしい緑の多い場所を見つけたら、そこはたいがいソテツやガジュマルなどの、南洋植物の群生地となっていた。
「そろそろ戻ろっかねぇ☁」
孝治のささやきどおり――と言うほどでもないけど、秋恵はやはり、退屈をしていた。
それも無理はなし。いくら道なき道を進んでも、一向に変わらない南国の島の景色ばかり。
青い空と白い雲。
瞳の前に広がる水平線。
実際、これだけでも贅沢の極みなのだが、それでも同じ情景ばかりが延々的に続くと、早々に飽きがくると言うものだ。
おまけに彼女の場合、偶然なのか、それとも単にコースから外れているだけなのか。孝治たちの出会った恐竜や観光客の面々とは、まだ一度も顔を会わせていなかった。そのため秋恵はこの無名の島を、今も無人島だと思い続けていた。
さらに彼女のビキニ姿を覗くような出歯亀野郎も、この島には絶対に存在しない――と安心しきっているので、なにを遠慮する必要があるだろうか。
「あれぇ? いつん間にか、こがんとこまで来てしもうたばい☻♋」
けっきょくブラブラしているうちに、彼女は島の反対側らしい、別の砂浜まで足を伸ばしていた。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |