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『剣遊記15』

第四章 謎のロビンソン漂着。

     (1)

 孝治たち(孝治、友美、涼子、千秋、ついでにトラ?)は、ほとほと疲れ切った思いになって、初めに上陸した浜辺に帰り着いた。

 

 しかも途中まで、千秋になついた何頭かの恐竜たちが、トコトコと可愛らしく(?)ついて来たりもしていた。だが彼女が誠意を持って説得し(?)、なんとか追い返してくれた。

 

「あんたら、もう自分の家に帰りや♐ いくら千秋が動物仰山好きや言うたかて、あんたらみたいな図体ばっかデッカい恐竜は飼えへんのやで

 

 なぜか言葉の意味がわかったようで、恐竜たちはトボトボと、元の家路(?)に戻っていった。

 

「なんや、いろいろあったっちゃけど、とにかくやれやれっちゃね

 

 すでに見慣れているピーチパラソルの立つ元の砂浜にたどり着くなり、孝治は大きな吐息を繰り返した。それからドシンと、砂の上に腰を下ろす。

 

 友美と涼子(美奈子と千夏と秋恵には、まだ見えないだろうけど?)もそれぞれ、砂浜の思い思いの場所に尻を付けていた。一方で新たなる涼子への理解者――千秋は、砂浜から少し離れたソテツの森の下。大きめの木の幹に、トラの手綱を結び付けていた。

 

 このような面々を、美奈子が出迎えてくれた――といっても、大袈裟に歓迎してくれたわけではない。相変わらず黒の超マイクロビキニ姿のまま、砂浜に敷いたビニールシートの上に置いたサマーベッドで、仰向けのポーズをご披露中。なんだかどこかの誰かに、自分の見事なプロポーションを、ご鑑賞していただきたいのであろうか。

 

「ずいぶん遠くまで行ってはったようでんなぁ☻ なんかけったいなことでもおましたんかいな?」

 

 仰向けなので、美奈子自慢の豊乳(きっと自覚している☻)が、ほとんど剥き出しの格好。しかもわずかの黒布と細い紐でカバーしている程度なので、今にもそれが、パンク寸前といった状態。孝治はやっぱり、瞳のやり場に困った。

 

「と、特に変わったこと……なかっちゃけ♋ ただこん島が実は無人島やなかった……っちゅうことだけはようわかったっちゃけどね☹」

 

「そうでっか まあ、誰か他人様がおりはっても、ようおます 要はうちらのレジャーを邪魔さえせえへんかったら、それでええさかいに

 

 孝治の返答は隠し事満載が見え見えであったが、美奈子はやはり、小さなことなどまったく気にしない性格のようである。そうでなければ、今やほとんど常時、超マイクロビキニで孝治たちの前を徘徊などしたりしないだろう。

 

「あら? 秋恵ちゃんがおらんみたいっちゃけど☚☛」

 

 ここで友美が、辺りをキョロキョロと見回した。現在この地には美奈子の他に、千夏がいっしょにいるだけ。彼女は砂浜で砂のお城を作ったりして、ひとりでキャッキャッとはしゃいでいた。

 

「そうやねぇ、どこ行ったんやろ?」

 

 孝治も周辺を見回したところで、美奈子が答えてくれた。

 

「秋恵はんどしたら、おひとりで近所を散歩しはる言うて、西のほうの海岸にひとりで行きよりましたで☞ まあ、もうすぐ帰ってきはるやろ☻」

 

 一応の親切のつもりであろうけど、美奈子はサマーベッドから起き上がろうともせず、アゴでしゃくって、西の方角を示してくれただけだった。

 

 早い話が横着。

 

「秋恵ちゃんも、ちょっと退屈したみたいっちゃねぇ まあ、恐竜に会{お}うて腰ば抜かさんかったらええっちゃけどね

 

 孝治は今のセリフを、軽くささやく程度にしてやった。先ほども友美たちと話したのだが、秋恵も恐竜と同じ、ホムンクルスの出身(?)なのだ。これでもしも両者が遭遇する事態になったとしても、お互いけっこう仲良くなったりして。

 

 こんな感じで特に深刻とか危険な状態とか――など、孝治は初めっから考えもしなかった。


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