『剣遊記15』 第四章 謎のロビンソン漂着。 (10) 「わしん名はロビンソンじゃねえけんのぉ✄ 蟹礼座{かにれざ}っちゅう、なんの変哲もねえ、ただでふつうで凡人の船乗りじゃけぇ✎」
「ずいぶん『ただ』っとか『ふつう』ば強調するっちゃねぇ♐」
孝治はロビンソン――改め蟹礼座の自己紹介に疑問を感じたが、今は突っ込まないようにした。
ヒゲのロビンソン――蟹礼座は、すぐに自分の両足で立てるほどまでに元気が回復。ベッドの上での世話から解放された。
「ロビンソンはんやのうて、かにれざはん言いまんのでっか☛ 船乗りなんに遭難しはるやなんて、なんや海でけったいなことでもお有りになったんどすかえ?」
「い、いや……そ、それは、じゃのう……☁」
美奈子から問われると、なぜか口ごもるロビンソン――もとい蟹礼座であった。孝治は早速であるが、今後の前途多難を予感した。
「やっぱり、っちゃねぇ☢ この物語のパターンとして、ふつうの旅行で終わるはずなかっちゃけねぇ☠」
友美と涼子もそれぞれ無言のまま、孝治の両脇でうんうんとうなずいていた。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |