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『剣遊記15』

第四章 謎のロビンソン漂着。

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「わしん名はロビンソンじゃねえけんのぉ✄ 蟹礼座{かにれざ}っちゅう、なんの変哲もねえ、ただでふつうで凡人の船乗りじゃけぇ✎」

 

「ずいぶん『ただ』っとか『ふつう』ば強調するっちゃねぇ♐」

 

 孝治はロビンソン――改め蟹礼座の自己紹介に疑問を感じたが、今は突っ込まないようにした。

 

 ヒゲのロビンソン――蟹礼座は、すぐに自分の両足で立てるほどまでに元気が回復。ベッドの上での世話から解放された。

 

「ロビンソンはんやのうて、かにれざはん言いまんのでっか☛ 船乗りなんに遭難しはるやなんて、なんや海でけったいなことでもお有りになったんどすかえ?」

 

「い、いや……そ、それは、じゃのう……☁」

 

 美奈子から問われると、なぜか口ごもるロビンソン――もとい蟹礼座であった。孝治は早速であるが、今後の前途多難を予感した。

 

「やっぱり、っちゃねぇ☢ この物語のパターンとして、ふつうの旅行で終わるはずなかっちゃけねぇ☠」

 

 友美と涼子もそれぞれ無言のまま、孝治の両脇でうんうんとうなずいていた。


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