『剣遊記14』 第四章 謎の怪竜出現……いやいやもう大決戦! (4) 孝治は中型剣を前に構えた体勢で、地面にペッとツバを吐いた。
「友美の言うとおり、図体がデカ過ぎばい☠ そもそもなして、おれらがあげな怪物と戦わんといけんとや☢ と今さら疑問ば言うても遅過ぎっちゃねぇ✄」
この疑問は、初めっから孝治の胸に燻{くすぶ}っていた。だが、ここまで事が至っては、本当に戦うしか道はなさそうだ。かと言って、あの長くてムニュムニュした触手に絡まれるのも、二度と御免被りたい災難である。
などと戦士としてあるまじき隙を、孝治は無意識のうちに晒していた。そこを見逃してくれるような、頭の悪いモンスターではなかった。
グギャアアオオオオオオン!
「うわっち!」
気がつけば瞳のすぐ前まで、タコの触手がシュルシュルと伸びてきた。
「うわっち! うわっち!」
孝治は大慌てとなって、現在の立ち位置から、後方にピョンと跳びのいた。
タコの触手は地上では、まるで鞭のごとくだった。先端が地面を激しくバチンと打ち叩き、盛大な土埃が現場で炸裂した。
「うわっちぃ……危なかぁ……♋」
孝治の額を、冷たい汗がダラダラと流れ落ちた。もう一瞬遅ければ、孝治は足場の大地ごと、埃のように弾き飛ばされていたかもしれなかったからだ。
ところがティラノダコラは、明らかに孝治を狙ってさらに、触手の第二攻撃をかけてきた。
グギャアアアアアンっ!
「うわっち!」
先ほどはどうやら右の触手だったので、続いて飛来したほうは、当然的に左側。その左の触手が空気をビュンと裂くようなうなりを上げ、孝治に向かってシュルルッと飛んできた。
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