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『剣遊記14』

第四章 謎の怪竜出現……いやいやもう大決戦!

     (3)

「せ、先ぱぁ〜〜い……まさかあれと真正面からケンカするつもりやなかでしょうねぇ……♋」

 

 荒生田は湖全体を眺められる、少しだけ小高い丘の上に立っていた。そのすぐ下の平地では、ブリーフ姿の裕志がビビリまくりの状態でいた。

 

 これもいつものパターンだけど。

 

「しゃーーしかったぁーーい! おまえ得意の火炎弾ば、早よ喰らわせてみいやあーーっ!」

 

「は、はい♋」

 

 けっきょくこれも、いつもの強引ぶりで押し切られた感じ。裕志がティラノダコラに向けて両手の手の平を差し向け、ボソボソながらで攻撃魔術の呪文を唱えた。姿格好こそみっともないの頂点であるが、もともと黒衣自体が魔術師のハッタリのような飾り物。魔術の実力自体には、一切関係なしなのである。

 

「はあっ!」

 

 それでもなんとか呪文の詠唱を終え、同時に裕志の両手の手の平から、拳骨大の火の玉が噴出された。

 

 グゴッ? 『なんやこら?』――と言う感じでティラノダコラが、自分に向かってボワァーーッと飛来する火の玉に、初めは怪訝そうな鳴き声を上げていた。しかしその火の玉が、ティラノダコラの胸部にまともに命中! 大した大きさではないが、ボワンと爆発的な火炎が、花火のように周囲へと広がった。

 

 グガアッ!

 

 しかしティラノダコラに怯んだ様子は見られなかった。それどころか逆にというか当然なのだが、モンスターの怒りに油を注いだだけの結果で終わったようだ。

 

 グギャアアオオオオオン!

 

「このおたんちぃーーんっ! もっと連続して発射せんかぁーーい!」

 

 荒生田の怒りにも、同じように油が注がれていた。

 

「は、は、はい!」

 

 言われるまでもなく、裕志も火炎弾を連射した。

 

「わたしも手伝うっちゃ!」

 

 勇敢にも友美も前に駆け出して、裕志と並んで同じポーズになって、火炎弾の連射を繰り返した。この期に及んでなんけど、友美は裕志に借りた黒衣を着用したまま。

 

「はあっ! はあっ! はあっ!」

 

 だがいくらふたりがかりで火を浴びせても、ティラノダコラは怖気づくどころか、ますます戦意を高揚させるかのようだった。

 

 グガアアアアアアアッ!

 

「駄目っ! 相手が大き過ぎっちゃよ!」

 

「ひゃわぁーーっ!」

 

 友美と裕志が慌てて退却した。


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