『剣遊記14』 第四章 謎の怪竜出現……いやいやもう大決戦! (16) ついにティラノダコラが、大木の太い幹に、ガッチリと両方の触手を絡ませた。これにて二島の実況も、いよいよ絶好調の域となった。
「右手を木の本体にかけました! 凄い力でんがな! いよいよ最期! さようなら皆はん! さよぉ〜〜ならぁ〜〜っ✋♪」
「うわっちぃーーっ!」
バキバキメキメキと、大木がまるで鉛筆のごとく、直角にへし折られる事態と相成った。孝治と二島はそろって悲鳴を上げながら、大木と共に地面にドッシャーンと落下の憂き目を見た。付近に濛々と埃と土煙が舞い、辺りはなにも見えない状況だった。
それでも孝治と二島は生きていた。まあこの手の話に死人は無用なのだが、これは奇跡というより御都合主義の恩恵であろうか。
『孝治ぃーーっ!』
真っ先に発光球スタイルの涼子が飛んできた。そのあとを友美も追っていた。
『だ、大丈夫っちゃねぇーーっ!』
「ケガは無か!」
「大丈夫やなかっちゃけどぉ……ケガは無いみたい♨」
それでもビキニスタイルの孝治は、全身埃と土煙で真っ黒の有様。
「と、とにかく二島さんも早よ、こっから連れて逃げるっちゃあーーっ!」
孝治は倒れている大木の周辺を、キョロキョロと見回した。幸いにもティラノダコラは木を倒しただけで満足をしたらしく、すでにこの場から離れていた。おまけに二島も無事であった。
「やあ、私の役目は、一応これにて終わりはったようでおまんなぁ♥ それじゃ逃げまっか☛☛」
「あの有名なセリフば言うて自己満足ばしたとね? あんたもわからん人っちゃねぇ♋」
大木とともに高所から落とされたにも関わらず、二島はかすり傷のひとつもなし。それは孝治にも言える話であるが、とにかくこれも、御都合主義の賜物であろう。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |