『剣遊記14』 第四章 謎の怪竜出現……いやいやもう大決戦! (13) とにかくそうと決心すれば、次に出てくるセリフも早かった。
「よっしゃ! 今回の冒険はこれにて終了! 早よ逃げるっちゃあーーっ!」
別にリーダーの株を取ったわけではないが、孝治は大声で宣言してやった。
「ぶわっかもぉーーん! 逃げんやなかぁーーっ!」
当然の展開ながら、荒生田からの怒号が飛んできた。
「高がモンスターごときに背中なんざ見せるなんち、それでもおめえら戦士けぇ! 戦いの女神がきっと、号泣ばして泣き叫ぶけねぇーーっ!」
「あのおっさんも、無茶苦茶言いよるっちゃねぇ☠」
孝治は逃げようとしていた足を止め、先輩に振り返った。すると声を上げた当の本人はティラノダコラの位置から、なぜか五十メートル近くも離れた場所にいたりして。
孝治は荒生田に、言葉で反撃してやった。
「確かにおれは戦士っちゃけど、友美と裕志は魔術師やけんね⚠ やきー、ほんなこつ無茶言うたらいかんのやけ⛔」
するとなんだかお墨付きを頂いたような顔になって、裕志が真っ先に駆け出した。
「っちゅうわけで、ぼくと友美ちゃんは逃げるけね✈」
「なんかズルかっちゃねぇ☢ まあ、ええたい☻」
まるで納得のいかない思いであるが、孝治は改めて逃げないほうで決心し直した。
なんだかんだと言ったって、荒生田先輩は逃げてはいないのだ。モンスターからかなり距離を取っているとはいえ、それは五十歩百歩の範疇に入るだろう。孝治だって一度は逃げようとしたのだから。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |