『剣遊記14』 第四章 謎の怪竜出現……いやいやもう大決戦! (11) 孝治はけっきょく、戦闘とはかけ離れたインスタントビキニスタイルとなって、ティラノダコラとの決戦に挑む破目となった。
「いっつもなんやけど、こげな話の展開っちゃねぇ♨」
ほとんどヤケの気持ちである孝治は、ビキニのままで剣を持って、戦場をバタバタと駆け巡った。しかしティラノダコラの暴れ方も、今や尋常ではなかった。長い二本の触手を縦横無尽に振りまくり、孝治たちを寄せつけようとはしないのだ。
「はあっ! はあっ! はあっ!」
友美も効果が薄いと自分で言ったものの、それでも火炎弾の連続射撃を続けていた。
「とりゃあーーっ!」
グギャガオオオオオンッ!
だが、モンスターが火炎弾に気を取られている隙を狙って、うしろに回った孝治は背中の表皮に、剣をバチンと叩きつけた。しかし触手の部分は人が噛めるほどのやわらかさがあったのに、全身の爬虫類じみた皮の所は別物だった。
「うわっち! ジーーンときたっちゃねぇ♋」
叩いた孝治のほうこそ衝撃を感じたほど、岩のように固い表皮であったのだ。孝治は慌ててティラノダコラから飛び離れ、触手の伸びる範囲外までの距離を置いた。
「ふむふむ、皆の衆、ようたあけらしいほど頑張っとるようだがねぇ☻」
「うわっち?」
このとき孝治は、ふと声のした方向に顔を向けた。ここから少し離れた丘の上で、完全に高見の見物を決め込んでいるような日明の姿があった。
「おっさん! あんたなんしよんねぇ♨」
無性に腹の立った孝治は、日明に向けて大声を張り上げた。
「おれたちがこげん命ば張って戦いよっとに、ひとりで観客気取りなんけ! ええ身分っちゃねぇ♨」
さすがはあの黒崎店長と、お友達関係にある人らしい。それはそれで感心の的であるが、当の本人は、いたって呑気な感じを孝治に見せつけた。
「ぬわにをたあけらしいこと言いよるだないがにぃ☻ うわたくしはあのモンスターの生態を、あすんどる暇ばにゃーほど研究せにゃならんのだがねぇ☛ 孝治クンとやらはいらんこと言わんで、戦士としての本分を務めるがええがや☞」
「あ、あのねぇ……♋♨」
こりゃあかん、言うても無駄っちゃ――孝治は改めて日明の、ティラノダコラと並ぶほどの非尋常ぶりを実感した。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |