『剣遊記14』 第四章 謎の怪竜出現……いやいやもう大決戦! (10) ところがこれまた意外な事態。本物のタコとは違って、触手にも立派に神経が通っていたらしかった。ティラノダコラが悲鳴のような雄叫びを上げて、孝治を触手の絡みから解放。地面にベタンと落としてくれた。
「うわっち!」
多少の粘液で体中がベトベトながら、孝治は剣を杖代わりとし、なんとか二本の足で立ち上がった。
「あいつ……けっこう痛がりみたいばい……♋」
とにかく助かってから改めて考えてみれば、剣で触手の先を斬られるたびに、怯んだ様子を見せていたモンスターであった。だからもしこの考えが正解ならば、これはかなり有望な戦法になったりして。
「こ、こげんなったら、がむしゃらでも攻撃あるのみっちゃね♐」
そこへまた徹哉が駆けつけた。
「孝治サン、ソノ服、弁償シテクダサイナンダナ。ボクハソンナニ服持チジャナインダナ」
「なんちゅうこと言うっちゃね……うわっち!」
言われて腹を立てたついで、孝治は自分の今の状況も再認識した。もはや背広だった物は完全にボロボロの切れ端と化し、大事な部分(?)をかろうじて隠している程度にまでなっていた。
「うわっち! ちょ、ちょっと待たんね!」
孝治は大慌てになって、その残った切れ端のあちらこちらをヒモのように結びまくった。
「孝治ぃーーっ!」
ここで危機一髪のように駆けつけてきた友美も協力してくれた。結果、出来上がったスタイルは、見事なビキニ水着姿だった(前回に続いて)。
「な、なんとかこれで動けるっちゃけど、恥ずかしか格好やねぇ☁」
孝治は顔を、ポッと赤らめた。これを見ている徹哉が言った。
「孝治サン、弁償ノ話ニ戻ルンダナ。ソノ衣装、上下合ワセテコノグライニナルンダナ」
それから徹哉は、右手の手の平を孝治の前で、パッと開いてみせた。つまり五の付く勘定って意味なのだろうか。
これに対する孝治の返答は、頭に血が昇りまくった状態でいた。
「おまえはおれの体の心配よか、服の値段のほうが重要なんけぇ!」
さらにハリセン(神出鬼没)で、徹哉の頭をカーーンとしばいてやった。
妙に固い頭っちゃねぇ――とは、あとで思い出した話。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |