『剣遊記14』 第四章 謎の怪竜出現……いやいやもう大決戦! (1) 「うわっちぃーーっ! あのタコワニっちゃあーーっ!」
孝治は声の限り以上の大音響で叫んだ。
「わたしたちが抜けた穴よか大きかのが、こん池田湖のどっかにあったみたいっちゃねぇ!」
友美も池田湖から顔を出したモンスターに右手の人差し指を向け、やはり大きな声を張り上げた。
『だとしたらあいつが来たのっち、あたしらの責任かもね☠ あいつ、想像以上に執念深かったんばい☠』
これは発光球スタイルのままでいる涼子の声。しかし孝治と友美以外には聞こえていなくて、今は幸いであったろう。実際にもし孝治と友美の失敗が今の涼子の声でバレたら、また荒生田たちから突っ込まれまくる話の展開となるからだ。
「ほほう☀ あれが孝治クンが言うたところのタコワニだがね☻」
このとき日明が湖上に浮かぶタコワニモンスターの頭部を見て、不敵そうな笑みを浮かべていた。さらに徹哉も言葉を付け加えた。
「デモ博士、アレハボクノめもりー回路ニ、資料ガ残サレテアルヨウナンダナ」
そのとたんだった。日明が徹哉の後頭部を、右手でバチンと叩きつけた。
「プシュゥ……」
徹哉がなぜか、沈黙した。
「痛たた……ええころかげんなことは言わんでええがね!」
「うわっち?」
まるでなにかをごまかしたような、日明の不思議な態度であった。孝治は再び、以前に抱いたのと同じ疑問を、胸に生じさせる気になった。
(なんか訳ありみたいなことばっか言うてから、これっちなんかの布石のつもりなんけ?)
しかしこの疑問の解消は、もはや無理なる話だった。事態の進行が、それどころではなくなっていたからだ。
池田湖から頭部を露出させているモンスターが、さらに大きな波しぶきを立てて、ザバババッと陸地に迫ってきた。
その恐ろしい姿を直立させて。
この瞬間、孝治は今までの自分の認識が、大いに間違っていたことを目の当たりにした。
「うわっち! ワ、ワニやなかっ! あいつはぁ……♋」
湖の岸辺近くで立ち上がったモンスターは、人の背丈を五倍以上も上回っていた。それもはっきりとした二本足で。
ここまで本体を現わしてくれたなら、その本性はもはや明確と言えた。
孝治は続けて叫んだ。
「あいつはワニやのうて恐竜っちゃよぉ! それもティラノサウルスばぁーーい!」 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |