『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (8) 「なんや、あれぇ!?」
野生児である千秋も驚き顔をもろ出しにして、前方の巨獣――らしき物体に瞳を向けていた。
もはや領土問題――ではない。『りょうこ』問題は棚上げだった。それよりも千秋は、巨獣の全体像を、マジマジと見つめていた。
「ま、まるで、なんやなぁ……海坊主みたいとちゃいまっか?」
「そ、そうっちゃねぇ……♋」
千秋に言われて、孝治もなんとか落ち着きを取り戻した感じ。それと言うのも、千秋命名である海坊主のような巨獣は、今も孝治たちの前方に立ちはだかっているのだが、なぜかちっとも、こちらに襲いかかってくるような素振りを見せないからだ。
実際、巨獣は明らかに、孝治たちを自分の視界に入れているに違いない状況。それなのに、ほとんど無関心みたいな様子っぷり。ときどき毛がまったく生えていない長い首と頭部を上下させては、足元にあるソテツの葉っぱを、ムシャムシャとうまそうに口にしていた。
『あれ……なんか本で見たことあるっちゃよ☞✍』
こちらもどうやら、落ち着きを取り戻したらしい。たった今空中に舞い上がったばかりである涼子が、孝治たちの前に、元どおりでふわりと着地した。この光景は、千秋(とトラ)のみ、見えていないはずだ。ついでに千秋が、先ほどの孝治の叫びを、もう忘れている様子にも感謝。
それはとにかく、涼子が言った。右手で指差しながらで。
『あれって……大昔、たぶん一億年以上も昔に絶滅したはずの……なんかスーパーサウルスみたいなんに似とうっちゃねぇ✎』 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |