『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (7) 「涼子っ! どげんしたっちゃあーーっ!」
もはや場所をわきまえず、孝治は大声で叫んだ。『場所をわきまえず』の理由は、この場に千秋もいるからだ。今の孝治はまさに、この大事な秘密厳守を忘れていた。
「えっ!? 『りょうこ』って誰なん?」
千秋が孝治に顔を向ける行動も当然と言えた。しまし今の孝治は、もうそれどころではなかった。けっこう気が強いはずの涼子が驚き声を発したのだから、それなりの緊急事態が明白なのだ。
その緊急事態が、間髪を入れずに出現してくれた。
「あれば見てん!」
友美が進路の前方を、右手で指差した。
「うわっちぃーーっ!」
孝治も再び大声で叫んだ。孝治たちの瞳の前には、いかにも南国風であるソテツなどが群生している草原があった。いつの間にやら一行は、深い樹海を通り過ぎていたようだ。しかもそのソテツの群生を優に超える格好で、一頭の巨獣らしき代物が、ニョッキリと長い首を伸ばして姿を見せたのだ。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |