『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (6) オレンジビキニの孝治と、青色だがやはりビキニ姿の友美。さらに紺色スクール水着である千秋の三人で連れ立って、無名島の奥地のほうへと歩みを進めていった。
おっと、真っ裸幽霊の涼子も忘れてはいけない。ついでだが、千秋が手綱を牽いている、角付きロバのトラもいる。
つまり幽霊も含めれば、四人と一頭の陣容である。この一行の周囲には、いかにも南洋らしい植物が大量に生い茂っていて、すでに海岸の明るい光景からは、かなり隔絶されたような感じになっていた。
早い話が、人跡未踏の道無き道。ここで千秋がつぶやいた。
「これだけ草とか木が生えとんやさかい、この島にもけっこう水があるっちゅうことやなぁ⛲」
孝治は内心で考えた。千秋のつぶやきとは、別の次元の話を。
(やっぱ、なんやかんや言うたかて、中身だけでも男はおれひとりやけねぇ✊ おれがみんなば守ってやらにゃいけんばい⛑)
はっきりと申して、誰もそこまで孝治に期待はしていないだろう。そこは孝治もわかっていた。なので次に出た一同向けのセリフがこれ。
「まあ、ここはほんまもんの無人島みたいなんやけ、性根の悪か野郎どもなんち、さすがにここにはおらんやろうねぇ☻ それでもおるとしたら、やっぱモンスターみたいなもんばいねぇ☢☻」
そのとたんだった。孝治たちの周りにズシンと、まるで地響きのような轟音が響いてきた。
「きゃっ!」
「うわっち!」
友美となぜか孝治のみが、可愛い悲鳴を上げてしまった。
「き、聞こえた……☁?」
周りをキョロキョロと窺いつつ、友美が初めにささやいた。孝治も続いてささやいた。やはり周りをキョロキョロとしながらで。
「ほ、ほんなこつ、モンスターけ?」
「この島……ネーちゃんが言うたとおり、なんかおるで☢」
トラの手綱を右手で強く握っている千秋も、同じく前後左右をキョロキョロと見回していた。ここはさすがに野生児らしく、孝治よりも肝が据わっているようだ。彼女は悲鳴を、ひと言も発していなかった。その代わりであろうか、警戒心は並みの人の約百倍はありそうだ。しかしトラのほうは、見えないなにかに怯えるようにして、鼻先を千秋の体に寄せていた。
『あたし、ちょっと様子ば見てくる✈』
千秋に応じたわけでもないだろうけど、涼子がこの場から、ふわりと舞い上がった。この場は現在、先の見通しがあまりよくない、樹海の中と言っても良いような地点である。そこで幽霊の身を有効活用。まずは行く先の偵察――と言うのだろう。
ところが事態の進展は、涼子の行動よりも迅速だった。
『きゃあーーっ!』
空中高く舞い上がった涼子が、そこで甲高い悲鳴を上げたのだ。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |