『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (5) 誰もいない砂浜にマットを敷き、そこにピーチパラソルを立てたりすれば、貸し切り海水浴場――プライベートピーチの簡単な出来上がりとなる。
今回は秋恵がパラソルやマットの役目を担うわけでもなく、美奈子が冒険――もといレジャーのために持参。慌てて購入した備品であると、孝治は千秋から聞いていた。
「っちゅうことは、あの黒紐としか思えん超マイクロビキニも、この航海が決まって急きょ買ったっちゅうことっちゃね☻」
孝治は苦笑気分に浸りながら、現在海岸ではしゃいでいる美奈子たちに瞳を向けた。そこでは美奈子だけでなく、千夏と秋恵も貸し切り状態である海水浴場を、思う存分に満喫中。しかも――である。千夏と秋恵はまだふつうの水着であるから良いのだが、もうしつこく繰り返し述べているとおり、美奈子は特別。まさしく黒とは言え、紐が全然目立たない超極細製なので、彼女の姿は見ようによっては、完全に真っ裸――としか思えなかった。特に背中側から見ると、マッパそのもの。
「ここに……『元』付きとは言え男がおるっちゅうのに、美奈子さん、心底から安心しきっとうっちゃねぇ⛑ ほんなこつ、おれん立場がなかっちゅうもんばい⛐」
「まあ、ええやないか、ネーちゃん☻」
ピーチパラソルの傘の下で砂浜に尻を付け、先ほどから同じ愚痴を繰り返している孝治であった。そこに、砂場でのいろいろな準備(ピーチバーベキューをするつもりらしい。穴を掘って枯れ枝や紙くずを入れ、その上に鉄製の網棚と鉄板を用意中)をしている千秋が、ニヤけた笑みで言ってくれた。
「もともとネーちゃんが、人畜無害の草食系的な性格がいかんのやで☢ そやさかい師匠かて、安心安全の極みっちゅうもんや♡」
「ほんなこつ、それでいいんけ?」
孝治はそこまで割り切った気持ちになれる美奈子たちに、なんだか一般人の常識とは異なる非日常性を感じていた。実際、初めて会ったときから、その性格に浮世離れな部分が見られたものの、付き合いが長ければ長くなるほど、彼女たちの頭の構造が、さらに理解できなくなってくるのだ。
「それよりネーちゃん、暇やったらちょっと、千秋に付き合{お}うてくれへんか? 島の奥に焚き火用の枝を拾いに行かなあかんし、トラもちょっと散歩させたいんや✈」
「あ、ああ……ええっちゃよ☚」
ここで急に出た千秋の誘いに、孝治は軽い気持ちで返事を戻した。どうせ暇な現状も事実であるし。
「あっ! わたしも行く✋」
同じピーチパラソルの下、マットにうつ伏せで寝ていた友美も、今の千秋の声で目を覚ましたようだ。こうなると当然、好奇心旺盛な幽霊も、絶対に黙ってはいない。
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