『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (3) 「アノ島デエエカイノォ」
水晶球――らぶちゃんの声がどことなく面倒臭げに、孝治には聞こえていた。
「ほんなこつ、やる気あるとやろっか?」
無論らぶちゃんが本心でなにを考えているかなど、美奈子には、まったく関係がなかった。魔術アイテムに、『本心』とやらがあればの話であるけど。
「おーきに、ほんまけっこうでおま✌」
大型帆船――ラブラドール・レトリーバー号の舳先の真正面に、その島が見えていた。孝治も一応、海図で確かめてみたのだが、この海域には小さな島が多過ぎて、本当に記載どおりの島かどうか、まるでわからなかった。それでも遠目で見た印象では、島に人が住んでいるような形跡(港の桟橋や家屋など)がまったく見当たらないので、ここは美奈子の念願どおり、無名で未確認の無人島なのかもしれない。実際美奈子は、心底から満足の模様である。
「うちらはあの島で三日間ほど過ごさせていただきますさかい、らぶちゃんはんは、この辺りの海に停泊しときはってや⛽」
「マア、ソノトオリニシトクケノォ。ホイジャガ、ホンマニエエンカ?」
むしろ、さすがの最新鋭魔術も、美奈子の突飛過ぎる行動ぶりには、多少の疑問を感じているようだ。このときは孝治も、水晶球のセリフに仲間意識を抱いていた。
「う〜ん、そこんとこはおれも、らぶちゃんに同感ちゃね☻」
この間にも帆船は、すでに島への接岸準備に入っていた。大きな音を立てることなく、また現在強めの風が吹いてもいないのに、帆船の舳先がまっすぐ島へと向かっているからだ。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |