『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (14) あとに残った孝治たちは、唖然と呆然が合成されたような境地に置かれていた。
「……さすが、儲け主義大国のニッポンっちゃねぇ⛐ もしかして初めっから稼ぐつもりで、恐竜ば復活させたんとちゃうやろっか♠♣」
ボソリとつぶやく孝治の周りには、まだ大小の草食恐竜たちがたむろをしていた。だけどその正体がホムンクルスと判明しているので、もうビビる気持ちにはならなかった。
ついでに孝治は、あることも思い出したりした。
「そげん言うたら秋恵ちゃんも、ホムンクルスの出身やったっちゃねぇ☀ 今いっしょにこの場におったら、ここの恐竜たちと仲ようなったかもしれんばい☺☻」
「まあ、ここの恐竜たちには秋恵ちゃんみたいに、変身できる能力は無いみたいやけどね☕」
友美もくすりと微笑みながら、孝治のつまらない考えに付き合ってくれた。そんな中だった。
「で、ネーちゃんがさっき言いよった『りょうこ』って、いったい誰やねんな?」
「うわっち!」
しばし恐竜という大事に気を取られていたのだが(現在も進行中)、ここで油断を突かれたのごとくだった。孝治は見事、心臓に弓矢を射ち込まれたような奇襲を、千秋から受けてしまった。
「そ、それは、やねぇ……☁」
もちろん速攻で、明確に答えられる孝治ではなかった。
(こんガキ……恐竜に夢中になって完全に忘れとうっち思うとったとに……なんちゅうしつこさなんやろっかねぇ☠)
孝治は内心で舌打ちした。
「そ、それは、やねぇ……☁」
しかももはや、同じセリフを繰り返すしかできない状態の孝治であった。そこを友美が、代理を買って出てくれようとした。
「ちょっと待って、千秋ちゃん✋」
ところが友美が、なにか言い訳をしようとする寸前だった。なぜか当の『りょうこ』――涼子が、右手を友美と孝治の前に出して、その次に出てくるはずのセリフを止めさせてくれた。
『もうよかっちゃけ、孝治に友美ちゃん♐ こげんなったらもう、あたしん姿ば千秋ちゃんに見せてもええけ⚐⚑』
そのとたんだった。
「な、なんやぁーーっ?」
千秋が裏返った声を張り上げた。日頃のオクターブ高めである関西弁が、どこか壊れたような感じとなって。
「うわっち?」
「えっ?」
孝治と友美は、千秋がいったいなにに驚いたのか。初めはまったく見当がつかなかった。だけど次のセリフで、その原因が判明した。
「こらビックリ仰天、天王寺動物園っちゅうもんや! 友美はんがもうひとり、なんとマッパで千秋の前に出よったで!」 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |