『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (13) どうやら完全に友達となった感じである千秋と添乗員の会話は、次のような内容らしかった。
つまり無人島だとばかり思っていたこの無名の島は、これまたある魔術師の、ホムンクルス製造実験場だと言う。
要するに秘密の場であったので、海図にも地図にも記載されていなかった――と言うわけ。
しかも――である。その実験過程で生まれた太古の恐竜たちを、せっかく創ったからと言う(しょーもない)理由で、ジュラ紀と白亜紀をテーマにした、一大レジャーランドに仕立て上げた――と言うことらしい。
謎が解明された気分の孝治はついでに、もはやどうでもよさそうな疑問を尋ねてみた。
「なしてこのテーマパークの恐竜は、みんな草食のやつばっかなんね? もっとでっかいティラノサウルスなんかも飼育しとけば、もっとパークの人気も盛り上がっとうことやし、おれたちかてそげな情報ば、もっと早よう聞いとったっち思うっちゃけどねぇ✄✐」
この問いに、恐竜を創った魔術師の弟子で、現在は見てのとおりの観光案内係――添乗員を勤めている女性魔術師が答えてくれた。
「そんなん簡単な話やで☢ ティラノサウルスみたいな狂暴なもん置いといたら、人が襲われて喰われるんは当たり前っちゅうもんやろ☻ そやさかい、うちらはある前例の二の舞いだけは御免被るっちゅうもんや♋ その点草食系の連中ばっかしやったらそれなりに迫力もあって、なおかつ安心安全っちゅうもんやろ✌」
「納得……✊✋」
孝治はコクリとうなずいた。
「そないな理由で、うちはお客はんの案内で忙しいんや⛑ 海岸で好きに遊んでええし、恐竜たちとも仲ようなってええさかい、仕事の邪魔だけはせんといてや⚠」
けっきょく添乗員はそれだけを言い残し、団体の観光客を引き連れて、島の奥地へと、孝治たちの瞳の前から消えていった。
観光客たちからはとうとう、ひと言もセリフが無かった。これもよくあるパターンか。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |