『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (12) 「こん島っち……いったいどげんなっとうとや? ほんなこつほんまもんの『ジュ〇シッ〇・パ〇ク』みたいっちゃけど?」
孝治は恐れおののきを自覚しつつ、それでもボソリとつぶやかずにはいられなかった。
「友美はこげな、恐竜ばっかおる島の話っち、聞いたことなかっちゃね?」
「わたしかて知らんちゃよ⛔」
「そ、そうっちゃね☠」
友美の返答は、孝治の予測の範囲内だった。もはやこうなると不幸中の幸いは、この場に凶暴な肉食恐竜の類が、本当に一頭もいない――に尽きるだろう。そこへタイミングが良く――と言うべきか。なにやらペチャクチャと、人がしゃべる声がした。それもひとりやふたりなどではなく、大勢の人数がいる団体さんのようだった。
「うわっち? ここっち無人島やなかったと?」
孝治は声の方向に、顔と耳を向けた。見れば手旗を持った添乗員らしい女性に引き連れられた、一般の市民風の人々からなる一団。この人たちが観光目的で現われたであろう様子は、孝治の瞳で見ても一目瞭然。それどころか逆に、こちらが好奇の目で、ジロジロと眺められていた。こちらは三人とも(孝治、友美、千秋)水着姿なのだから、当然と言えば当然か。
これにてお互い呆然としているうちだった。添乗員らしき女性(きちんとガイド風の服装)が、恐竜と戯れている(?)孝治たちを瞳にして、なぜか関西弁で声をかけてきた。
「あらぁ? あんたら、こん島でなにしてはるんや?」
恐らく彼女たちは、近畿地方あたりから来た、ツアー客の一団であろうか。
「な、なにしてはるんや言うたかてぇ……☁」
恐竜といっしょの場にいる。このような不自然極まるシチュエーションをまともに見られ、孝治は思いっきり的で返答に詰まった。だけどそれでも気力を振り絞り、逆にまくし立ててやったりもした。
「そ、それはこっちが訊きたかっちゃけ♐ いったいこん島はなんね? 絶滅したはずの恐竜も謎っちゃけど、よう考えたらこげなロストワールドに平気な顔ばして観光しようあんたらのほうが、そーとー謎っちゃねぇ⚠」
孝治はなかば半ギレだった。これに女性添乗員は、簡単明瞭で答えてくれた。
「なん言うてまんのや? こん島の恐竜は全部、ホムンクルスの恐竜なんやで⛑」
「ほむんくるすぅ……?」
この返答に孝治は、あんぐりと開けた口を閉じられない心境となった。その代わりでもないだろうけど、続いて千秋が、添乗員に話しかけていた。
「あんさん、あんさん、生まれはもしかして大阪でっか?」
実に気安いしゃべり方だった。だけど添乗員のほうも、実にノリの良い性格をしていた。
「そやねん♡ これはまた奇遇でんなぁ☺ もしかしてあんたも大阪みたいでんなぁ☆」
「そや☀ 千秋はバリバリの浪速っ子なんやでぇ♡♡」
「そうなんやぁ☀ なんかえろう懐かしい気がするわぁ☆」
このあと延々と、添乗員と千秋の会話が弾け続けた。肝心の観光客たちは、置き去りにした感じで。それはそうとして、孝治の左横で涼子が感心していた。
『さすが関西人同士、ほんなこつ気が合うみたいっちゃねぇ☕ もうあげん、意気投合しとうっちゃよ☺』
「もう、なんやようわからんけ、こん島の話の続きは、全部千秋ちゃんに任せるっちゃよ☹」
関西人のノリの良さについて行けない孝治は、この島全体の謎の解明を、すべて千秋に委ねることにした。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |