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『剣遊記15』

第三章 無人島、バカンス三昧!

     (11)

 ここで友美が、変なところに感心した。

 

「千秋ちゃんっち、恐竜にそーとーくわしいんやねぇ✍ さすが動物好きで心かて通える千秋ちゃんっちゃね♡」

 

「そんなん褒めんでもええで☻☻」

 

 珍しくも千秋が、ポッと顔を赤らめた。

 

(千秋っちもしかして、あんまし褒められ慣れしとらんのやろっか?)

 

 などと孝治は、つまらないことを考えた。そうこうしているうちに、周囲がなんだか、ザワザワと騒がしくなってきた。

 

『きゃっ! 孝治あれ見てん!』

 

「うわっち!」

 

 急にあっちこっちをグルグル右手で指差す涼子に言われて、孝治もキョロキョロと周囲を見回した。

 

 それから仰天! その衝撃でこの場にて、約三メートル飛び上がった(嘘)。

 

 水着姿では初のジャンプであった。それと言うのも、孝治たちの周りをいつの間にやら、多くの恐竜たちが取り囲んでいたからだ。

 

 頭数を数える余裕すらないが、一応全部、草食恐竜のようではあった。しかしこの状況にあっても、千秋は小憎らしいほどに冷静な態度でいた。

 

「ネーちゃん、そない仰山驚かんでもええで☻」

 

「そ、そうけ……☠☢」

 

 年上の貫禄を保つために、孝治もこれ以上のビックリは、見掛けだけでもやめにした。それにしてもよく見れば、確かに恐竜図鑑で見た覚えのあるような連中ばかり。アンキロサウルスがいる。プロトケラトプスもいる。中でも少々大きめに見えるやつは、どうやらステゴサウルスのようでもあるが。背中に五角形の骨板が並んでいる姿だし。

 

 とにかくこれが草食でなく肉食の群れであったら、孝治たち一行はもはや、骨のカケラも残らないほどの無残な有様となるだろう。だがこのような究極の状況になってもなお、千秋ひとりが落ち着きまくり。こちらに近づいてきた三本の角が頭から伸びている恐竜――有名なトリケラトプスの鼻先を、よしよしと右手で撫でる超余裕ぶりを見せつけてくれた。

 

 トリケラトプスは頭の高さだけで千秋の身長を遥かに超えているので、それこそかつかつの背伸びで、『よしよし』を実行しているのであるけど。


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