『剣遊記15』 第三章 無人島、バカンス三昧! (10) まさしく巨獣の足元まで接近したというのに、そのスーパーサウルスとやらは、孝治たちなどまるで――どころか、本当に眼中に無しの感じ。とにかく足の下にいる雑魚{ざこ}など相手にせず、一心不乱にソテツの葉っぱばかりを、今もパクパクと食していた。
「まっ、ほんまもんの草食恐竜なんやけ、まあ当たり前っちゃあ当たり前っちゃね⛑ むしろ肉食の恐竜がおらんで良かったぁ〜〜っちゅうべきやろうねぇ☠」
「それはわからんちゃよ☢」
孝治のやや楽観的なつぶやきに、友美が物騒な返事を戻してくれた。
「ほんまもんの恐竜がおるなんち、この島がなんか異常な世界っちゅうことがわかったんやけ、ほんなこつティラノサウルスみたいな肉食恐竜がおったかて、いっちょも不思議やなかっちゃよ☠ ほら、わたしたちってずっと前、タコとティラノサウルスの合体生物かて見たことあるやろ♋」
「うわっち! そうやった♋☠」
友美に言われて、孝治は思い出した。かなり前の話だが、九州の南端、開聞岳と池田湖まで冒険に行ったとき、そこでタコと恐竜の人造合体生物と遭遇した経験があったのだ。
「もしかして……このスーパーサウルスだけやのうて、他にも恐竜がうじゃうじゃおるかもしれん、っちゅうことやね⚠ それやったら早よ、こん島から逃げたほうがええみたいっちゃよ⛔」
孝治は全身のガタガタを、今になって実感し始めた。さらに、その恐怖心に呼応するかのようだった。孝治の背後を覆い尽くしているソテツの群生が、いかにも雰囲気を盛り上げるかのごとく、気持ち悪くガサガサと揺れ始めた――と思う間もなく、新たな爬虫類顔の生物が、これまたニョキッと出現した。
今度登場したモンスターも、やはり恐竜といって間違いはないだろう。それも頭のてっぺんに、角のような棒のような、奇妙な突起物を伸ばしていた。
「うわっち! 出たぁーーっ!」
「ネーちゃん、もうちっと落ち着きや⛑」
孝治は千秋から、冷静に注意をされた。しかも千秋が、したり顔をして言ってくれたものだった。
「今うしろから出てきたんは肉食やのうて、おんなじ草食のパラサウロロフスっちゅうもんやで☞ よう見てみい、頭から伸びとう角みたいなもんで、空気呼吸しよう恐竜やねんな☻」
「ぱ、ぱらしゅうと……やない、ぱらさうろろふす、け?」
孝治はまたも恐る恐るながら、新たに登場した恐竜に、改めて瞳を向け直した。その目線の先では千秋の言うとおり、新たにご登場した恐竜――パラサウロロフスとやらが、孝治たちなどやはり眼中になし――のご様子。スーパーサウルスと同じように、ソテツの葉っぱをムシャムシャと食べてばかりしていた。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |