『剣遊記11』 第七章 グリフォンは野生に戻ったか? (6) 帰りの道中もこのような調子で、全般に渡ってドタバタの連続――ではあったが、もはや紙数も尽きかけているから割愛。とにかく福井県での冒険仕事も無事に終了。孝治たちは北九州市の未来亭に帰店した。
ところが帰ってきてもなお、沙織たち三人娘は未来亭に居座り続けたのである――と、その前に、一応密猟団の処置について、ここで簡単に記しておく。
「密猟者は全員、紙の中に閉じ込めてるわけだがね。このままにしておくのは気の毒だが、美奈子君が帰ってくるまで、金庫に仕舞っておくがや。このまんまじゃ衛兵隊にも引き渡せんがね」
「がばい残酷ばってん、ちかっと仕方なかですねぇ☠☢」
帰店した帆柱と孝治からの報告を受けた黒崎は、紙の束――密猟団の御一行を、本当に金庫の中へと収めてしまった。無論秘書の勝美も同意済み。
『二次元封印』の術。この魔術は仕掛けた当の魔術師――今の場合美奈子がいないと、彼らを紙の中から解放できないのだ。そのため黒崎は美奈子が戻るまで、二次元に閉じ込めたままでいる煎身沙一家を、店で保管するようにした――と言うわけ。
いくら犯罪者とはいえ、これは彼らを完全に人扱いしていない超非人道的処置であるが、現実として美奈子抜きでは、術を解く方法がなし。だからこのような人権蹂躙も致し方なし――と言ったところか。
ただし不幸中の幸いは、紙にされている限り彼らは一切の飲み食いなしで、何年でも何百年でも、そのまま生きられることにあった。
はっきりと申して、なんの慰めにもならない『幸い』であるけど。
「私にも人がかけた術ば解けんたいねぇ〜〜☠」
などと言いつつ、勝美にあまり同情の色はなし。
そんな密猟団の災厄は、この際棚上げ。本筋へと戻る。 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |