『剣遊記11』 第七章 グリフォンは野生に戻ったか? (4) ――と言うわけで、孝治たちと別れて石川県へと向かう、美奈子と千秋と千夏。
北陸街道でロバ――トラの手綱を牽き、一路金沢市を目指していた。
そんな三人の頭上を、一陣の黒い影がスサァーーと、風をなびかせながら通りすぎていった。
「ありゃ? 今のはなんや、見たことあるもんやったでぇ☝」
真っ先に気づいた者は千秋であった。しかしいっしょに空を見上げた美奈子は、特に関心も引かなかった様子っぷり。ただ淡々と、冷静に弟子に向かって述べるだけの態度でいた。
「ほんま、確かにうちらにも見た覚えがありまっせ♠ そやけど、もううちらには関係あらへんことやさかい、あれは見いへんかったことにして、先にさかせてもらいますえ✈」
「まっ、そんとおりやな♥」
「はいですうぅぅぅ♡」
千秋も千夏も納得の顔付き。しかし千秋は、影が向かった先の方向だけが、このあといつまで経っても気になり続けていた。
「……今の影が飛んでったんは、確か南の方角やったなぁ……♐ 千秋が思うにあの影、なんか追ってってくみたいやったで✈」 (C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |