前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記11』

第七章 グリフォンは野生に戻ったか?

     (2)

 その件はとにかくとして、密猟団全員が哀れ紙となり、箱詰めの憂き目となった。

 

 こうしておけば帰りの道中、彼らをぞろぞろと連行する手間が省けるし、飯代の必要もまったくなし。それになによりも、人目を気にしないで大勢を連れて帰れるところが、大きなメリットである。

 

「それじゃあ仕事も完了したことやし、帰るとするっちゃね☆☆」

 

 すべての無事一件落着を見届け、帆柱が高らかに宣言した。

 

「そうですっちゃねぇ♡」

 

 孝治も無論、これ以上の意見はなかった。それも今回はグリフォン野生復帰成功に加え、臨時の収入付き(密猟団の摘発)である。孝治自身で自覚をしているが、表情も自然とほころぶような気持ちになっていた。

 

「なしておめ、ニヤニヤおもしぇそうな顔してるだぁ?」

 

「うわっち! い、いや……な、なんでんなかっちゃね、なっ、友美♐」

 

「えっ? え、ええ……♥」

 

 思わずこぼれた笑みを、泰子から鋭く突っ込まれた孝治。その矛先を友美に振って、なんとか巧みにかわしたりする。その泰子と浩子も美奈子捜索に協力をしてくれていたのだが、孝治たちよりも少し遅れて、キャラバン隊に戻っていた。そこで自分たちが一生懸命捜していた美奈子と千秋たちがひと足先に帰っているところを見つけ、少々不機嫌気味にもなっているらしいのだ。

 

「いきなりわたしに振らんといてや♨」

 

 ここで相変わらず揉め事を他人任せにする孝治に、今度は友美がふくれっツラとなっていた。だけど、臨時収入を頂く経過は、実は友美も同じなのだ。

 

「……ま、まあ、ええっちゃね♥ こげんしてみんなケガ無しで無事に済んだっちゃけ……あとはなんもなしで、無事に九州まで帰るだけっちゃよ☀」

 

 憤懣は一応、胸の中だけに収めてくれた模様。友美もけっきょく愛想笑いを浮かべ、孝治に同調してくれた。

 

 こうしてとりあえずは無難な一線を保ちつつ、キャラバン隊は両白山地を下り、一路福井の市街を目指すこととなった。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2014 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system