『剣遊記14』 第五章 湖の秘密と後片付けはキチンとね。 (7) 孝治たちは間一髪で、半壊した空きビルの中から外へと飛び出した――と、そのすぐあとから、ティラノダコラが残った壁をドッカァーーンとぶち破り、再び逃走者たちを追ってきた。
これにて二階建てだった建造物は完全にガラガラと全壊。
「こん責任ば、いったい誰が取るっちゃろうかねぇ♋」
孝治は思わずつぶやいたが、それ以上はもう考えないようにした。
現実に今、巨大なモンスターが追ってきているのだ。そんな後処理など、悩むほうが野暮と言うものだ。
『駄目ばい、これって……♋』
孝治たちと同じ速度で宙を飛んでいる涼子の発光球が、下から聞いてもよくわかるほどに絶望的な口調となっていた。もちろん聞こえる者は、孝治と友美だけであるけれど――と、走っている道路の前になんと、荒生田と日明と二島の三人が、堂々の仁王立ちをして待ち構えていた。
街の破壊とその被害など、全然関係なしの顔付きで。ちなみに逃げる意志も見せなかった二島は、いつの間にか荒生田たちと合流をしていたようだ。
とにかく孝治は叫んだ。
「どうせ役に立たんのやけぇーーっ、先輩らも早よう逃げちゃってやぁーーっ!」
しかし荒生田は、まるで当然のように嘯{うそぶ}いてくれた。
「よかよかよかけ☻ それよか孝治、ほんなこつよかプロポーションっちゃねぇ☆☀」
「うわっち! 誰んせいでこげんなっとうっち思いよっとねぇ!」
ここでも孝治は恒例。荒生田の顔面真正面に、超必殺の飛び蹴りをドッカーーンと喰らわした。 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |